ロシア・ウクライナ戦争:「住民投票」なるもので消えた和平合意の可能性

執筆者:鶴岡路人 2022年10月11日
エリア: ヨーロッパ
ウクライナ東部ドネツク州で行われた「住民投票」なるものの光景=9月27日、マリウポリ   (C)AFP=時事
ウクライナ4州での「住民投票」と称する行為は茶番だが、ロシアが「併合」なるものの決定を覆すとは考えにくい。ウクライナは、プーチン政権とは交渉しない方針を決定した。停戦交渉・和平交渉が成立しないとすれば、戦争の正式な終結も難しくなる。「凍結された紛争」化を避けるためにも、占領地を早期に奪還する必要性がさらに上昇している。

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2022年9月30日、ウクライナの東部・南部の4州(ルハンシク、ドネツク、ザポリージャ、ヘルソン)をロシア連邦に一方的に併合すると発表した。それに先立って、それらの州で実施されていたのが、「住民投票と称する行為(日本政府)」である。

 これを受け、住民自らがロシアの一部になることを望んでいるとして、ロシア政府は一方的併合に突き進んだ。それが、ほとんど茶番とでもいうべきいい加減なものだったことは明らかで、このような一方的かつ違法な「併合」は、当然のことながら、国際社会で認められるものではない。

カテゴリ: 軍事・防衛 政治
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執筆者プロフィール
鶴岡路人(つるおかみちと) 慶應義塾大学総合政策学部准教授、戦略構想センター・副センタ―長 1975年東京生まれ。専門は現代欧州政治、国際安全保障など。慶應義塾大学法学部卒業後、同大学院法学研究科、米ジョージタウン大学を経て、英ロンドン大学キングス・カレッジで博士号取得(PhD in War Studies)。在ベルギー日本大使館専門調査員(NATO担当)、米ジャーマン・マーシャル基金(GMF)研究員、防衛省防衛研究所主任研究官、防衛省防衛政策局国際政策課部員、英王立防衛・安全保障研究所(RUSI)訪問研究員などを歴任。著書に『EU離脱――イギリスとヨーロッパの地殻変動』(ちくま新書、2020年)、『欧州戦争としてのウクライナ侵攻』(新潮選書、2023年)など。
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