反ゼロコロナ抗議デモの発端「ウルムチ火災」とは何だったのか

執筆者:熊倉潤 2023年1月12日
エリア: アジア 中東
「ウルムチ火災」の後、北京で抗議デモに参加した人々 ©AFP=時事
共産党による事実上の一党独裁体制が続く中国で、市民たちの抗議行動が「ゼロコロナ政策」を葬り去った。そのきっかけとなったのは新疆ウイグル自治区ウルムチでのマンション火災。犠牲者は全員ウイグル人といわれるが、抗議デモは中国全土の漢族に広がった。しかし、そのことは必ずしも“支配民族”と“被支配民族”の連帯を意味するものではない。

 

瞬く間に全土へ広がった抗議行動

 11月下旬から12月上旬にかけて、中国各地で天安門事件以来最大の規模といわれる抗議行動が発生した。その背後には、ゼロコロナ政策によるロックダウンの長期化、厳しい隔離措置、その他さまざまな日常生活への制約に対する不満があった。参加者が白紙を掲げて抗議を行ったことから、「白紙運動」または「白紙革命」と呼ばれ、一時中国は騒然となった。その後12月に入り、中国政府がゼロコロナ政策を放棄することが確定的になると次第に下火になった。

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カテゴリ: 政治 社会
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執筆者プロフィール
熊倉潤(くまくらじゅん) 法政大学法学部国際政治学科准教授。2009年東京大学文学部・歴史文化学科(東洋史)卒業、2011年東京大学大学院法学政治学研究科(旧ソ連政治史)修士課程修了。同研究科(国際政治)博士課程在学中の2012年から2016年にかけて、イェール大学、ロシア人文大学、中国北京大学に留学。2016年同博士課程修了。日本学術振興会海外特別研究員・台湾政治大学客座助研究員、アジア経済研究所研究員を経て、2021年から現職。著書に『民族自決と民族団結:ソ連と中国の民族エリート』(東京大学出版会)、『新疆ウイグル自治区:中国共産党支配の70年』(中公新書)。
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