
クーデタ直後の7月30日、ニジェールを訪れたチャドのマハマト・デビ暫定大統領(左)と会談する、軍事政権トップのアブドゥラハマネ・チアニ将軍(右)[デビ暫定大統領のX(ツイッター)より]
7月26日、アフリカのニジェールで軍事クーデタが発生した。28日には、大統領警護隊トップを長く務めているアブドゥラハマネ・チアニ将軍が、軍が全権を掌握したことを国営テレビで発表した。モハメド・バズーム大統領は軟禁されているとみられる。
アフリカの地域機構・準地域機構や有力諸国は、一斉にクーデタを非難した。しかしわずか2年ほどの間で近隣のマリ、チャド、ギニア、ブルキナファソに続いて発生した軍事クーデタだ。起こるべくして起こった、という印象を受けざるを得ない。
長年のイスラム過激派勢力との軍事紛争を通じて、もともと脆弱だったサヘル諸国の中央政権の統治基盤はいっそう脆弱化していた。そこにロシアのワグネルが暗躍し、苛烈なテロ組織掃討作戦を展開させながら、旧宗主国であるフランスが主導する西側諸国との関係断絶を促す。欧米諸国の植民地主義をスケープゴートにしたがる民衆の感情が、扇動されてしまう。
この衝撃は、フランスが旧植民地地域に対する影響力を低下させた、といった理解だけで終わるものではない。ニジェールは、フランスとアメリカが軍事駐留していた国だ。軍事クーデタに反発しているのは、ケニアのウィリアム・ルト大統領など比較的欧米諸国と良好な関係を維持しているアフリカの政権首脳だ。このクーデタは、欧米主導のサヘルにおける対テロ戦争の帰趨や、アフリカにおける欧米諸国の影響力の今後の行方に、大きく関わらざるを得ない。……

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