中国の背を押す西側「デリスキング」の揃わぬ足並み(2023年 第Ⅱ号‐2)

中国と提携し、協調することが重要だという見解は、依然としてヨーロッパでも根強く見られる[広東省広州市で、フランスのマクロン大統領(左)を茶会に招いた習近平国家主席=2023年4月7日](C) AFP=時事
ロシアによるウクライナ侵攻開始から1年が経過した今年2月24日、中国外交部は12項目からなる和平提案を発表した。現実の和平には結びつかず、これを評価する声も見当たらないが、自らのジュニア・パートナー化が進むロシアとの関係を欧米牽制に使う狙いは見て取れる。もちろん国際社会で非難を集めるロシアへの肩入れは諸刃の刃。中国にとっても影響力拡大は手探りだが、その背を図らずも押しているのが西側社会の対中政策における不一致だ。(2023年 第Ⅱ号‐1〈中国「仲介外交」が浸透して行く国際秩序の虚実皮膜〉はこちらからお読みになれます)

 

2.中国のウクライナ和平和提案

■存在の誇示と限界の自覚

 中国政府にとって、ロシアのウクライナ侵攻に対してどのような姿勢を示し、自らの立場をどのように国際社会に発信していくかは悩ましい問題である。一方では、開戦前の2022年2月4日に、習近平主席のウラジーミル・プーチン大統領との首脳会談の席で「際限のない友情」を示し、中ロ両国間の緊密な関係をアピールしながら、他方で、国際法上違法性の高い侵略によって国際社会から非難をされるロシアとは距離を置きたい意向も見られる。

 ちょうど開戦から1年が経過した2023年2月24日、中国の外交部は、「ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場」と題する、12項目からなる包括的な和平提案を示した[「关于政治解决乌克兰危机的中国⽴场(ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の⽴場)」、中华⼈⺠共和国外交部、2023年2⽉24⽇]。

 12項目は、「国家主権の尊重」、「冷戦思考の放棄」、「戦闘の停止」、「和平交渉の開始」、「人道危機の解決」、「民間人と捕虜の保護」、「原子力発電所の安全の確保」、「戦略リスクの低減」、「食糧サプライチェーンの保護」、「一方的な制裁の停止」、「産業サプライチェーンの安定性の確保」、「戦後復興の推進」によって構成される。内容としては、これまで中国政府が繰り返し示してきた一般原則を繰り返すに止まり、和平へ向けた具体的で実行可能な提案が含まれているわけではない。ただし、これによって中国はロシア・ウクライナ戦争の和平へ向けた一定の貢献を行っている姿勢を示そうとしたのだろう。

 翌日の『環球時報』には、この「中国の立場」を解説する記事が掲載され、「中国は常に客観的で公正な立場を維持し、問題の根本から認識して独自に判断を下し、国際社会との協力の上での対話と協議を推進してきた」との主張が展開された[「继续为和平解决乌克兰危机发挥建设性作⽤(ウクライナ危機の平和的解決のために建設的な役割を続ける)」、『环球⽹』、2023年2⽉25⽇]。この記事は、「中国の立場」の3日前に公表された「グローバル安全保障イニシアティブ」についても言及しており、「対話と交渉による政治的解決」の道筋と、「グローバルな問題解決の構想」が示されているとの解説がなされた。

 だが、ここでも抽象的な言葉と一般的な中国外交の原則が繰り返されるだけで、ロシアやウクライナが受け入れ可能な具体的な和平の道筋が示されているわけではない。あくまでも「中国の立場」の12原則の意義を繰り返し唱えるに過ぎない。当然ながら、このような中国政府の提案が、ロシアとウクライナ両国の政府に真剣に取り上げられ、実践される見通しはない。

 ウクライナ危機への中国外交の手詰まり状況を裏づけるように、2月27日には復旦⼤学国際問題研究院教授の趙明昊が、「ウクライナ危機に対する中国の影響力を誇張してはならない」と題する論稿を発表した。そこでは、中国のウクライナ危機に対する影響力が限られており、米中ロの地政学ゲームが飛び火して対立が悪化することに警戒すべきだと論じられている[趙明昊 (Zhao Minghao)「勿夸⼤中国对乌克兰危机影响⼒(ウクライナ危機に対する中国の影響⼒を誇張してはならない)」、『中美聚焦』、2023年2⽉27⽇]。

 同時にこの論稿は、プーチン大統領の「特別軍事作戦がうまくっていないことは明らかだ」「これは明らかにウクライナの抵抗を過小評価し、NATOの足並みの乱れを過大評価した結果だ」とも指摘する。また、プーチンは西側の経済戦争の影響は受けていないと分析しつつも、「ロシアが長期間の消耗戦を戦うことは非常に困難だろう」との冷静な予測も記された。さらには、ウクライナ危機の平和的解決の糸口は見つからず、中国にもたらす負の影響は増えているとして、「中国に対して非現実的な希望を抱くべきではない」とも言及した。これは、中国政府にとってロシア・ウクライナ戦争が困惑を生じさせる要因であり、そこへの影響力の限界が自覚されていることも示しているだろう。

■西側は「12項目の和平提案」をどう評価したか

 この中国の12項目の和平提案に対しては、西側諸国では否定的な評価が目立った。たとえば、ノルウェー防衛研究所のシニア・チャイナ・フェローで元ノルウェー外交官であるヨー・インゲ・ベッケヴォルは、「中国のウクライナへの『和平案』は平和のためのものではない」と題する論稿を寄せ、中国政府の主眼はこの和平案を通じて、グローバル・サウス、ヨーロッパ、そして戦後のウクライナという三者に対し、自らの立場を強化し、アメリカに対抗することにあると解説する[Jo Inge Bekkevold, “Chinaʼs ʻPeace Planʼ for Ukraine Isnʼt About Peace(中国のウクライナへの「和平案」は平和のためのものではない)”, Foreign Policy, April 4, 2023]。

 この和平案は、「ヨーロッパとの関係をリセットする」という中国政府の思惑と不可分の一体となっており、最大の安全保障上の脅威が、中国ではなくてロシアにあると印象づけようとしているとベッゲボルトは述べている。確かに独仏のような欧州諸国も、二極化した世界には反対という立場を表明し、その点では中国と見解が重なっている。だが他方で、ウクライナが求める和平の前提が自国領土の回復にあるならば、それが実現されるようロシアに対して圧力をかける意志が中国になければ、自らの和平を進めることは困難であろう。それゆえ、中国政府の思惑は「平和のため」というよりも、むしろヨーロッパとの関係で自らの立場を改善し、強化することにあるのだろう。

 米外交問題評議会の欧州担当フェローであるリアナ・フィックスと、オバマ政権では国務省政策企画室で勤務した経験を持つマイケル・キメージの『フォーリン・アフェーズ』誌における共著論文、「中国はいかにしてウクライナ戦争でプーチンを救済できるのか」においても、この戦争における中国の政策的意図について論じられている[Liana Fix, Michael Kimmage, “How China Could Save Putinʼs War in Ukraine(中国はいかにしてウクライナ戦争でプーチンを救済できるのか)”, Foreign Affairs, April 26]。

 フィックスとキメージは、ロシア・ウクライナ戦争では中国には「3つの国益」があるという。それは、第1にプーチン体制の崩壊を防ぐことであり、第2には国際秩序への自国の影響力を拡大すること、そして第3には戦後も中国が十分な影響力を保持することである。これらはいずれも、中国にとって重要な国益となるために、中国がこの戦争で傍観者になることはない。換言すれば、アメリカがこの戦争での勝者になって、戦後にその影響力が拡大するような趨勢は好まない。同時に、戦争への中国の関与には、米欧の関心をインド太平洋や台湾から遠ざけるというメリットも存在する。その反面、ロシアが敗北するシナリオとなれば、中国は国際社会で孤立して、さらにイランや北朝鮮のように扱われる可能性もある。これらのような理由から、フィックスとキメージは中国がロシア・ウクライナ戦争に過度に関与することもないであろうと予測する。

■中国のジュニア・パートナー化するロシア

 ロシア・ウクライナ戦争における中ロ関係は、この戦争の今後の展開を占う上で、もっとも重要な二国間関係ともいえるだろう。

 ブルッキングス研究所フェローで米中関係や東アジアを専門とするパトリシア・キムは、西側の国際秩序への不満を共有する中ロは特別なパートナー関係であり続けるが、それでもなお中ロの間には利益の違いがあり、アメリカは両国関係を過小にも過大にも評価せずに政策を打ち出すべきだと論じている[Patricia M. Kim, “The Limits of the No-Limits Partnership(限界のない関係の限界)”, Foreign Affairs, March/April 2023]。

 確かに、ロシアとの関係は中国の対外イメージを損なっている面もあるが、中国がすぐにロシアを手放すことはないだろう。それでもなお、中ロの協力関係には限界が存在している。すでに経済大国である中国は、国際情勢が安定していることに利益があり、ロシアほど暴力的な現状変更を志向しないであろう。他方で、中ロ関係が着実に強化されている現実も、留意すべきだ。アメリカは、安定性を求める中国の利益に訴えることで、ロシアの核兵器の不使用や、より正当な和平合意への圧力をかけることができるかもしれない。キムの結論は、このまま中ロ両国が世界を分断させていくことを放置せずに、必要に応じて既存の国際秩序を部分的に修正することも必要となるだろうとの見解だ。

 他方で、ロシア人で国際派の外交専門家である、カーネギー国際平和財団ロシア・ユーラシアセンター長のアレクサンダー・ガブエフは、『フォーリン・アフェアーズ』誌に寄せた中ロ関係に関する論説のなかで、ロシアが中国のジュニア・パートナーの地位に没落する現実を説明する[Alexander Gabuev, “Whatʼs Really Going on Between Russia and China(中ロの間で⼀体何が起こっているのか)”, Foreign Affairs, April 12, 2023]。

 3月の中ロ首脳会談では、非公式であるが防衛協力の深化と武器売却が決定された。それを契機に、両国間の非対称性が強まっているとガブエフは見る。ロシアは中国への依存を強め、中国にとってロシアは、アメリカとの対立を深めるなかで不可欠なジュニア・パートナー的存在となりつつある。また、ロシアと中国はいずれも西側諸国からの経済制裁を受けていることからも、防衛装備の共同研究開発を進めることが予想される。ロシアの軍事技術が時代遅れになる前に、中国との共同研究開発を通じて軍の近代化を志向する姿勢が、ロシア内部では主流となっているという。

 ただしこれもガブエフによれば、中ロ関係は非対称性を増しているが、必ずしも一方的ではない。軍事技術や科学で優れた人材を擁し、豊富な天然資源があり、さらには国連安保理常任理事国であるロシアは、中国にとっては非常に都合の良い友人である。中ロ関係の持続性は、弱体化するロシアを統御する中国の能力に依拠していると論じている。

■インドは中ロ関係をどう観ているか

 それでは、そのような中ロ関係はインドからはどのように見えているのであろうか。ロンドン大学キングス・カレッジの教授で、オブザーバー・リサーチ財団の副代表であるハーシュ・パントは、習近平主席のモスクワ訪問がインドに及ぼす影響について分析している[Harsh V. Pant, “Xiʼs visit to Russia and the takeaways for India(習近平のロシア訪問とインドにとっての教訓)”, Observer Research Foundation, March 22,2023]。

 パントによれば、今年の3月に日本の岸田文雄首相がウクライナを訪問し、対照的に中国の習近平主席がロシアを訪問したことが、よりいっそう二極化が進む世界の現状を象徴するという。そして、中ロ同盟は冷戦後の地政学を再編成し得る、重大な枢軸のように見え始めていると論じる。習近平はインド太平洋地域で自らに有利なパワー・バランスを実現することが目標であり、ジュニア・パートナーとなったロシアのプーチンはそのための便宜的なパートナーである。中ロ枢軸が、インドの安全保障のあり方に根本的な変化をもたらす可能性を指摘して、旧来的な思考に留まるインドの戦略コミュニティに警鐘を鳴らしている。そして、このようなグローバルなパワー・バランスの変化において、インドが十分に利益を得られるような行動が必要になっていると説いている。

3.マクロン仏大統領訪中への批判

■発言を肯定する見解も一定数は存在

 中国の対外行動をめぐる国際社会の認識が大きく揺れ動く中で、4月5日にフランスのエマニュエル・マクロン大統領と、EUのウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長の二人が、訪中した。この二人のヨーロッパの政治指導者は、中国政府との協力を深める上で、異なるアプローチを示すことになった。

 訪中後の4月9日に、マクロン大統領が仏『レゼコー』紙に応じたインタビューが、物議を醸す結果となった[Nicolas Barré, “Emmanuel Macron : « Lʼautonomie stratégique doit être le combatde lʼEurope »(マクロン⼤統領―「戦略的⾃律」は欧州の闘いであるべきだ)”, Les Echos, April 9, 2023]。

 マクロン大統領は、台湾有事の際にヨーロッパがアメリカの追従者となってはならないとして、そこから距離を置く必要を述べた。また、ヨーロッパには戦略的自律が求められており、自らの危機ではない状況にとらわれるべきではないと、暗に台湾情勢の際に米中対立の狭間で自立的な行動をとる必要を示唆した。これに対しては、フランス国内をはじめ、多くの欧州諸国から批判の声が上がった。また、翌々日の4月11日には、「対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)」が声明を発表して、「マクロン大統領は、ヨーロッパの声を代弁していない」と、その対中融和的な姿勢を批判した。

 このマクロン大統領の訪中、およびその後のインタビュー記事は、国際的波紋を生んだ。例えば、『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙の社説では、「マクロン、台湾とウクライナの問題で失敗」と題して、習近平主席との首脳会談直後という最悪のタイミングで対中融和姿勢と、台湾防衛から距離を置く意向を示したことを批判する[The Editorial Board, “Macron Blunders on Taiwan-and Ukraine(マクロン、台湾とウクライナの問題で失敗)”, The Wall Street Journal, April 9, 2023]。

 この社説によれば、マクロン発言は、アメリカがロシアの脅威からヨーロッパを守ってくれることを期待しながら、太平洋地域における中国の侵略に対しては中立を宣言しているようだと述べ、西太平洋における日米による対中抑止を弱めていると批判する。さらにはこのような発言が、アメリカ国内におけるウクライナ支援への反発や、ヨーロッパでの安全保障上の関与を縮小せよとする声を、よりいっそう勢いづかせるとも指摘する。

 フランス国際関係研究所(IFRI)のセリーヌ・パジョンもまた、「ヨーロッパは、台湾海峡の紛争に巻き込まれるのを避けるべき」というマクロンの主張が、インド太平洋の地政学的現実から乖離したものであり、この地域の諸国の間でのフランスの信頼性を損なう懸念があると論じる[Celine Pajon, “France's Macron is sending China the wrong signals(フランスのマクロンは中国に誤ったシグナルを送っている)”, Nikkei Asia, April 12, 2023]。

 パジョンによれば、そもそもマクロンはアメリカと中国を同一視しているようだが、それは価値観や政治体制の違いを無視し、また米仏間に存在する同盟関係も見落としている。フランスはインド太平洋地域における建設的なステークホルダーであり、控えめながらも一定の役割を担うことができるはずだ。フランスは、中国とアメリカの間の中立的な仲介役となるのではなく、パートナー諸国とともに積極的にアジェンダ・セッティングをし、中国へと明確なシグナルを送る必要があるという。

 フランスの『フィガロ』紙では、トマス・モア研究所のインド太平洋プログラムディレクターを務めるローラン・アメロットによる、マクロン大統領の訪中と発言をめぐる批判的な論稿が掲載された[Laurent Amelot, “Taïwan : Les propos d'Emmanuel Macron montrent la nécessité de rebâtir la politique chinoise de la France(台湾―エマニュエル・マクロンの発言は、フランスの中国政策の再構築の必要性を⽰している)”、, Le Figaro, April 17,2023]。

 アメロットは、マクロン発言が「アメリカや西側の同盟国との戦略的関係を弱める一方で、独裁的で攻撃的な性質を持つ中国共産党をより勢いづかせることになる」と警鐘を鳴らす。そして、「マクロンのアプローチはユートピア的である」と述べ、「EUの国際的信頼を著しく損なった」と批判する。そのような混乱が見られる中、アメロットはフランスの対中戦略の再構築が必要だと問題提起する。

 他方で、マクロンの訪中についてある程度肯定的な見解も見られた。『ルモンド』紙のコラムニストのシルヴィ・カウフマンは、フランスのマクロン大統領とEUのフォン・デア・ライエン委員長が訪中して、ロシア・ウクライナ戦争を終わらせる上で中国に働きかけた意義を指摘した[Sylvie Kauffmann, “Europe is feeling its way towards a new relationship with China(欧州は中国との新たな関係への道を認識し始めている)”, Financial Times, April 7, 2023]。あくまでもヨーロッパは中国との関係で、「デリスキング」を望んでいるのであって、「デカップリング」を望んでいるわけではない。中国はEUにとって最大の貿易相手国であり、中国とヨーロッパが共通の基盤を見出すことも可能であろうとカウフマンは述べる。このような、経済的機会の確保と多極的な世界での安定化へ向けて、中国と提携し、協調することが重要だという見解は、依然としてヨーロッパでも根強く見られる。

■米欧の足並みの乱れが中国を後押し

 とはいえ中国の近隣のインド太平洋地域諸国の多くからも、マクロン大統領の対中融和的な姿勢に懸念を示す声が聞かれた。

 たとえば、マクロン大統領が安全保障と経済を切り離すことができるという幻想を抱いていると批判したのは、オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)のエグゼクティブ・ディレクターであるジャスティン・バッシと、同研究所防衛戦略部門ディレクターのベック・シュリンプトンだ。二人の論稿は、太平洋地域と大西洋地域の安全保障を連関させて考える必要を指摘して、集団的な戦略を基礎に中国に働きかける重要性を説いている[Justin Bassi and Bec Shrimpton, “Macron is wrong to see China and Russia as separate concerns(マクロンは中国とロシアを別個の懸念と⾒なす点において誤っている)” , Nikkei Asia, April 17, 2023]。

 マクロン大統領の訪中と発言は、西側諸国のなかでの対中アプローチが依然として十分に調整されておらず、分裂が見られることを露呈させた。ドイツのグローバル公共政策研究所のトルステン・ベナーは、『フォーリン・ポリシー』誌に「ヨーロッパは中国をめぐり悲惨なまでに分裂している」と題する論稿を寄せて、その問題を指摘した[Thorsten Benner, “Europe Is Disastrously Split on China(ヨーロッパは中国をめぐり悲惨なまでに分裂している)”, Foreign Policy, April 12,2023]。すなわち、ヨーロッパの指導者たちの一連の中国訪問を総括すると、「(スペインのペドロ・)サンチェス首相、マクロン大統領、フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長の訪問を経て、唯一勝利したのは習近平である」。というのも、「習近平はヨーロッパの利益にとって不可欠な問題について一切譲歩せず、ヨーロッパからの訪問者たちはヨーロッパと米欧の結束の乱れを習近平に示し、ヨーロッパの中国政策を混乱に陥れた」からである。

 このように、アメリカやヨーロッパでは、対中政策をめぐり依然として混乱や、顕著な立場の違いが見られ、具体的にどのように「デリスキング」を進めていったらよいか、そのアプローチに統一性が見られない。そのことが、中国の影響力拡大に一定程度寄与しているというべきであろう。 (「2023年 第Ⅱ号‐3」へ続く)

カテゴリ: 政治
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
API国際政治論壇レビュー(責任編集 細谷雄一研究主幹)(エーピーアイこくさいせいじろんだんれびゅー)
米中対立が熾烈化するなか、ポストコロナの世界秩序はどう展開していくのか。アメリカは何を考えているのか。中国は、どう動くのか。大きく変化する国際情勢の動向、なかでも刻々と変化する大国のパワーバランスについて、世界の論壇をフォローするアジア・パシフィック・イニシアティブ(API)の研究員がブリーフィングします(編集長:細谷雄一 研究主幹 兼 慶應義塾大学法学部教授)。アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)について:https://apinitiative.org/
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top