中国経済への処方箋は単純明快?

Foresight World Watcher's 3Tips

執筆者:フォーサイト編集部 2023年9月15日
タグ: 中国 日本 国連
エリア: アジア
資金繰り懸念を抱える中国の不動産最大手、碧桂園(カントリー・ガーデン)の開発現場[2023年8月15日、中国・北京](C)AFP=時事

 今週もお疲れ様でした。中国経済がデフレ不況に入ろうとしているなら、やはりこの人に聞かねばということでしょう。英エコノミスト誌が「バランスシート不況」の提唱者として著名なリチャード・クー氏に、「中国経済の日本化」についての見解を求めています。中国政府の方針については「自らのバランスシートを必要なだけ汚すことに後ろ向きだ」と辛い点数がついていますが、考えてみれば大胆な積極財政による需要喚起というクー氏が長年唱えてきた処方箋は、日本よりも政権のイニシアチブが効きやすい中国に相性がいいのかもしれません。

 フォーサイト編集部が週末に熟読したい記事、皆様もよろしければご一緒に。

Does China face a lost decade?【Economist/9月10日付】

 2週間前、この「週末に読みたい海外メディア記事」の終段で、「ここしばらく、英『エコノミスト』誌で『Japan』の文字を見かけることが増えたように感じられる」と書いた。この傾向はどうやらまだ続いているようだ。

「健全な経済では企業は家計や他の貯蓄者から供給された資金を使い、事業の拡大に資金を投入する。バブル崩壊後の日本では状況が違っていた。企業は資金を調達する代わりに負債を返済し、金融債権を自身で蓄積し始めた。[中略]企業の抑制は、日本経済が必要としていた需要と起業家の活力を奪い、10年あるいは20年のデフレを招いた」
「では、中国は日本と同じ道を歩もうとしているのだろうか? 中国企業が積み上げている負債は、対GDP[国内総生産]比で日本のバブル期よりさらに多い。[中略]利下げにもかかわらず、信用の伸びは急激に鈍化している。[中略]人口減少および米国との敵対という要因まで考えあわせると、憂鬱になるのも無理はない。この先、最良のシナリオが実現したとしても、せいぜい日本のコースをたどる程度だろう」

 エコノミスト誌は9月10日付「中国が直面しているのは失われた10年か?」(雑誌版でのタイトルは「バランスシートの上で(In the balance)」)において、中国経済の苦境を論じるのに、再び日本を引き合いに出してきた。サブタイトルに「習には日本の陥った運命を回避できるツールがある。それを使うべきだ」とあるこの記事は次のような見方を示す。

「しかし、よく見てみると、中国の運命は決定的なものではない。中国企業が負っている負債の多くは国有企業によるもので、彼らは政策立案者から求められれば、国有銀行の支援を受けて借入と支出を続ける。民間企業では負債は不動産開発業者に集中している」
「金融機関を除くと、企業部門は依然として他の経済部門から資金を求めている。中国企業は、日本をデフレの10年に追いやったような、利益の最大化から負債の最小化へという集団的自滅的な転換を行っていない」

「こうした違いは、中国がまだ日本のような不況に陥っていないことを示している」としたうえで同誌は、日本のバブル崩壊後のデフレ不況を「バランスシート不況」と名付けてウォッチし、そこからの脱出法についての提言を続けてきた野村総合研究所チーフエコノミスト、リチャード・クーの言葉を紹介する――「中国を統べる習近平がもし正しいアドバイスを得られるなら、問題を20分で解決することができる」。……

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カテゴリ: 政治 経済・ビジネス
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