中国の動きが、世界ひいては自分たちの生活に大きな影響を与える時代になった。中国がどうなるのか、どう動くのか。ここの判断を間違えば、間違った対応となり、日本ひいては世界は大きな打撃を受ける。
しかも昨秋の第20回党大会において習近平体制が整ったにもかかわらず、中国の不安定さを示唆するニュースに事欠かない。中国の情勢判断の鍵は、中国共産党の視点、特に習近平第3期政権にあっては、習近平の視点から物事を眺めてみることだ。彼らが中国の実情を一番よく理解しているし、実際に自分たちの考えに沿って中国を動かす力があるからだ。
習近平の視点は、党の機関紙である人民日報を読むことで分かる。習近平の講話なり、人民日報の解説なりを読みながら、どうしてそういう発言をし、解説をしなければならないのかを考える。そうするとそこに中国共産党の狙いとともに、抱えている問題点が浮かび上がってくる。
そこから見えてくる習近平政権が直面する極めて重大な挑戦の1つが、中国の巨大な官僚機構にある。今回は、ここに焦点を当てて習近平政権のかかえる問題について解説する。
いまだ絵に描いた餅の「中国の夢」
習近平政権は、第1期、第2期の10年で、「中国の夢」を打ち出し、それを実現する考え方と方策を打ち出した。習近平の「重要講話」の形で語られるこれらを集大成したものが、「習近平思想(習近平の新時代における中国の特色ある社会主義思想)」に他ならない。「習近平思想」を踏まえ、実施に必要な党の決定や政府の法令、規則も作られた。つまり国政を導く大きな考え方と政策、法令に裏打ちされた体制整備は出来上がった。
次は実施態勢であり、先ず人事は、少なくとも中央委員会レベル(大臣以上)は、習近平に忠実な人物で押さえた。これだけでは不十分だというので、昨秋の党大会後から、今度は「習近平思想」の党内学習運動を始めた。党内の意思統一をはかり、実施を担保するためであり、中国共産党の伝統的手法でもある。特に本年4月、習近平思想の徹底を図る「主題教育」に関する党中央の意見1が通達された。この主題教育運動は、党機構の上から下に向かって2段階に分けて行われ、来年1月に終了する。
一方で現状を見れば、法令を整備し、組織を整備し、人事を固め、「習近平思想」をしっかり学べば、ものごとは順調にいくはずなのに、実際は上手くいっていない。「習近平思想」を実施に移す段階で、習近平政権は大きな困難に直面しているのだ。
第1の困難は、「習近平思想」そのものの持つ「弱さ」から来る。……
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