帰国者・接触者外来の設置、保健所の関与――ルールと現場状況の乖離(2020年2月~3月)

執筆者:松本哲哉 2024年3月26日
エリア: アジア
感染拡大を受け、各大学は受験生にマスクの持参、着用を認めるとともに、試験会場にアルコール消毒液を設置した[2020年2月25日、東京都文京区の東大・本郷キャンパス](C)時事通信フォト
2020年2月1日、新型コロナウイルス感染症は指定感染症の「2類相当」に位置付けられ、医療体制の整備が進み始めた。この新たな感染症に対応できる病院は限られており、感染可能性の高い患者に受診を限定する方針になったことが、ルールと現場状況の乖離を生んでしまった。「帰国者・接触者相談センター」が設置され患者にとって唯一の窓口になった保健所は、電話だけで受診の是非を判断せねばならなかった。一方で医師は、患者に検査結果を告げることはできても、対応を自ら判断する権限は持たなかった。

 

新型コロナは指定感染症に指定された

 国は感染症法の政令制定を2020年1月28日の閣議で決定し、新型コロナウイルス感染症を同年2月1日から指定感染症に指定した(当初予定の2月7日を前倒し)。

 感染症法においては、すでに知られているさまざまな感染症は、感染力や重篤性等を考慮して1~5類に分類されている。エボラ出血熱のように1類感染症に指定された感染症は死亡率も高く、入院対応できる医療機関も限定され、患者だけでなく、その検体を含めて厳密に取り扱われる。

カテゴリ: 医療・サイエンス
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執筆者プロフィール
松本哲哉(まつもとてつや) 国際医療福祉大学医学部感染症学講座代表教授、国際医療福祉大学成田病院感染制御部部長 1987年長崎大学医学部を卒業後、同第二内科に入局。米国ハーバード大学留学後、東邦大学講師、東京医科大学主任教授を経て、2018年から現職。日本化学療法学会理事長、日本臨床微生物学会理事長、日本環境感染学会COVID-19対策委員長。日本感染症学会専門医・指導医。PMDA委員、AMEDプログラムスーパーバイザー、東京都iCDC専門家ボード感染制御チームリーダー等も兼務。主な著書に『新型コロナウイルス 「オミクロン株」完全対策BOOK』(宝島社、監修)、『福祉現場のための感染症対策入門』(中央法規出版、監修)、『これだけは知っておきたい日常診療で遭遇する耐性菌ESBL産生菌』(医薬ジャーナル社)、『介護スタッフのための 高齢者施設の感染対策』(ヴァンメディカル)など。
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