
注目を集めた静岡知事選挙は立憲民主党、国民民主党が推薦した前浜松市長・鈴木康友が自民党推薦の元静岡県副知事・大村慎一に勝利した。結果は鈴木72万8500票、大村65万1013票で両者の票差は7万7000票余りだった。地盤である浜松市で鈴木は大村に14万票以上の差をつけたことが一番の勝因となった。
元々静岡県には静岡市と浜松市という2つの中心都市があり、お互いをライバル視する独特の事情を抱えている。浜松の前市長鈴木と静岡市出身の大村の戦いは両市の地域対抗戦の側面もあり、必ずしも自民vs.立憲・国民という構図だけでは捉えられない部分もあった。
自民党の悪評が勝敗に影響した静岡県知事選
しかし選挙結果を細かく見ていくと、やはり自民党の不人気ぶりが窺える。地元の関係者はこう分析する。
「鈴木さんは県西部の浜松を中心に強い地盤を持っていた。大村さんとしては静岡市以東で鈴木さんを圧倒しなければいけなかったが、そこまでの票を獲得できなかった。これが痛かった」
静岡市以東の自治体別の結果を見ると、
沼津市(県東部) 鈴木3万520 大村3万3373
三島市(県東部) 鈴木1万8270 大村2万2027
富士宮市(県東部) 鈴木2万1080 大村2万2085
など、いずれも大村がより多くの票を獲得しているものの「圧倒的な票差」を獲得できなかった。このため浜松を中心とした県西部の票で鈴木の逆転を許すことになった。
静岡県は、浜松市を初めとする県西部は立憲や国民民主などの野党が、静岡市や伊豆半島などの県中部、県東部は自民党の強い地盤と見なされていた。しかし県中部や東部で大村は伸び悩んだ。自民党の裏金問題などの悪評が影響したとみられている。
筆者は〈岸田総理の解散戦略を占う「電撃訪朝」「茂木潰し」「静岡県知事選」〉という記事(5月14日)で、この静岡県知事選挙が、岸田文雄総理が密かに機会を窺う衆議院の解散総選挙を行うか否かの判断材料となり得ると報じた。岸田の“暴走”を警戒する自民党幹部らは、投票結果が判明する前から「これは静岡の一地方選挙だ。国政に直結するような事態にはならない」と予防線を張っていたが、幹部らが懸念する結果とはならなかった。
そして静岡県知事選の敗北から一夜明け、さらに衝撃のニュースが政界を駆け巡った。
6月20日告示、7月7日投開票の東京都知事選挙に立憲民主党の蓮舫参院議員が出馬を決めたと各メディアが報じたのだ。
“小池神話”の終焉
蓮舫「裏金議員、政治とカネの自民党、自民党政治の延命に手を貸す小池都政をリセットしてほしい。その先頭に立つのが、私の使命だと感じています」
5月27日午後、立憲民主党の本部で会見を開いた蓮舫は立候補を表明すると同時に、小池都政の8年を手厳しく批判した。
蓮舫「8年間の彼女の功績・実績はどうでしょうか。7つのゼロ公約、どこにいったんでしょうか。介護離職、残業、都電の電柱……どれもゼロにはなっていません」「反自民党政治、非小池都政、私は知事選にこの姿勢で臨みたい」
蓮舫の主張したい点は、8年前、自民党と袂を分かって颯爽と登場した小池百合子都知事だが、その後は「自民党返り」が顕著になっているということだろう。確かに去年暮れの江東区長選挙や今年1月の八王子市長選などで自民党の推す候補をともに支援するなど、「自民党に手を貸す小池都政」と指摘されても仕方ない行動が目立っている。

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