
選挙イヤーといわれる2024年。世界の多くの国・地域で、左右の別なくときの政権与党が苦戦を強いられている。11月に大統領選が投票を迎える米国はいわずもがな。6月30日の第1回投票を経て、7月7日に下院の決選投票を迎えるフランスには、政治体制の土台が揺らぎかねないと、熱い関心が寄せられている。
マリーヌ・ルペン氏が率いる国民連合(RN)の躍進に、誰もが当惑の色を隠さない。金融市場では、フランス国債の価格が急落し、フランス株がひとり際立って下落している。エマニュエル・マクロン大統領のRN封じの奇策にいったんは買い戻しが入るも、事態は崖っぷちである。
日本の投資家たちは、米国の金融政策に一喜一憂するのに比べて、欧州情勢の展開にはいささか疎い。だが日本勢は合わせて25兆円あまりのフランス債券を保有し、外国投資家としてはフランス国債の最大の保有者なのである。「欧州情勢は複雑怪奇」。寝耳に水の独ソ不可侵条約の報に内閣総辞職を余儀なくされた、戦前の平沼騏一郎内閣の故事が蘇る。
マクロンの経済運営は合理的だったが
「極右や極左が勝利すれば、歳出拡大などで金融危機につながりかねない」。フランスのブルーノ・ルメール経済・財務相は6月14日、そう警告した。極右や極左への警戒感を煽って、有権者の票をつなぎとめようとする「瀬戸際作戦」である。だがそうした警告は有権者の心には刺さらず、皮肉にも債券、株式相場が自己実現的に底割れしだしていたる。
米格付け会社のS&Pグローバルは5月に、フランス国債の格付けをAAからAAマイナスに1段階格下げしたばかり。AAマイナスは日本国債のAプラスより1段階上とはいえ、今後の政局の行方次第ではフランス国債が再度格下げされてもおかしくない。信用の低下に伴いフランス国債はドイツ国債に比べて高い利回りでなければ買い手がいない。6月26日時点の仏国債の利回りは3.2%と独国債の2.5%を0.7ポイント上回った。
フランスの金融市場の混乱は相当に深刻である。ならばフランス経済は破局的に悪化しているのだろうか。17年に誕生した現在のマクロン政権の経済運営は決定的に間違えていたのだろうか。答えは

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