Dear Madam or Mr. President――私がアメリカに望むこと

Foresight World Watcher's 5Tips

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 米「フォーリン・ポリシー(FP)」は雑誌版の最新・秋季号で「親愛なるアメリカへ(Dear America)」と題したカバーストーリーを組んでいます。この特集の核となるのが、9人の識者がしたためた「次期大統領への手紙」(オンライン公開は9月9日)。宛先として米国民を選んだ筆者もいます。

 かなりの長文記事ゆえ詳しい紹介は難しいのですが、欧州、エネルギー、国内分断、グローバルサウス、グローバリゼーションなどテーマは多様。そして各筆者の手紙には、これまでアメリカが先頭に立って作ってきたグローバルなシステムが破壊されることへの懸念が共通しているように思います。

 それを、覇権国のメリットが消えたからといって自己都合でシステムを改変するなと諭すのか、あるいは新たな秩序を共に作ろうと誘うのか、アプローチの姿勢は様々ですが、いずれにせよ少し変わった角度から現在のアメリカを浮き彫りにする、とても興味深い企画でした。各手紙に付されたタイトルと書き手の顔ぶれから、今回の「週末に読みたい海外メディア記事」を始めます。

 他にヒズボラを攻撃したイスラエルのポケベル爆弾、中国・深圳の日本人学校男児刺殺事件などを取り上げます。フォーサイト編集部が熟読したい海外メディア記事5本、皆様もよろしければご一緒に。

Letters to the Next President【Joseph S. Nye Jr., Joseph E. Stiglitzなど/Foreign Policy/9月9日付】

  • ▼「妥協のフラストレーションを受け入れよ」

マーティン・キマニ――元ケニヤ駐米大使、米ニューヨーク大国際協力センター専務理事

  • ▼「防衛にならない孤立主義」

アランチャ・ゴンザレス――元スペイン外相、パリ国際関係大学院(PSIA)学院長

  • ▼「あなたの国民を大切に」
  • ダニー・カー――シンガポール国立大リー・クアンユー公共政策大学院教授

  • ▼「プレイはルールに従って」

ジョセフ・E・スティグリッツ――米コロンビア大教授、ノーベル経済学賞受賞者

  • ▼「依然として重要な環大西洋パートナーシップ」

キャサリン・アシュトン――前EU(欧州連合)外務・安全保障政策上級代表、元英上院院内総務兼枢密院議長、米ウィルソン・センター特別フェロー

  • ▼「クリーン・エネルギーは安全保障」

ジェイソン・ボルドフ――米コロンビア大気候変動研究大学院共同学院長、同大国際公共政策大学院グローバルエネルギー政策センター所長

  • ▼「グローバルな多数派を形成せよ」

マーク・マロック=ブラウン――元国連副事務総長

  • ▼「戦略的自立は脅威とならない」

ニルパマ・ラオ――元インド外務次官、元インド駐米・駐中大使

  • ▼「ソフトパワーに投資せよ」

ジョセフ・ナイ――米ハーバード大特別功労教授

The Beeper Balance Sheet【Daniel Byman/Foreign Policy/9月19日付】

「最も懸念されるのは、イスラエルの指導者たちが長期的な思考をまったくしていないという可能性だ。イスラエルには、国家安全保障に関する意思決定において短期的な政治的思考を行うという長い伝統があり、ヒズボラに対する絶え間ない圧力は、イスラエル人がいずれ後悔するようなエスカレーションのスパイラルを助長する可能性がある」
「最大のリスクは、今回の事態が全面戦争へと発展する可能性があることだ。[中略]ヒズボラは大量のロケット弾とミサイルを保有しており、イスラエルのミサイル防衛と防空能力を圧倒して国内の民間人とインフラを標的とした攻撃を行うことができる。たとえヒズボラが甚大な損害を被ったとしても、彼らはレバノン国内に多くの支持者を抱えており、イランの支援を受けながら戦力を再構築して数年後にはイスラエルに同等の脅威をもたらす可能性がある」

 ポケットベルやトランシーバーといった通信機器を爆発させるという手段でイスラエルがヒズボラの構成員などを攻撃したことを受け、イスラエルやパレスチナ、レバノンなどをめぐる情勢がいっそう流動性を増している。今回の攻撃をめぐってすでに多くの分析や予測がなされるなか、目を引いたのはFP誌サイトに9月19日付で登場した「ポケベルのバランスシート」だ。

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カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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