Weekly北朝鮮『労働新聞』 (90)

祖国統一研究院を「対敵研究院」に名称変更か(2024年11月3日~11月9日)

執筆者:礒﨑敦仁 2024年11月11日
タグ: 北朝鮮 金正恩
エリア: アジア
蜜月を演出するロシアと北朝鮮の間には、微妙な温度差も感じられる[モスクワを訪問しプーチン大統領(左)と面会した北朝鮮の崔善姫外相](C)EPA=時事
韓国・尹錫悦大統領に関する白書を「対敵研究院」が発表したことが報じられた。同研究院は、南北関係の悪化に伴い2019年8月以降は言及されていなかった「祖国統一研究院」を改称したものだと考えられる。崔善姫外相とプーチン露大統領の面会が報道された一方、米大統領選でのトランプ当選にはいまだ触れていない。【『労働新聞』注目記事を毎週解読】
 

 11月5日付は、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が平安(ピョンアン)北道の洪水被害復旧建設現場を現地指導したことを報じた。現地では、李煕用(リ・ヒヨン)朝鮮労働党平安北道委員会責任書記のほか人民軍部隊と白頭山(ペクトゥサン)英雄青年突撃隊の指揮官たちが金正恩を出迎えた。北朝鮮メディアが何度も報じてきたように、建設現場に動員されているのは兵士と青年である。

 金正恩は、12月の党中央委員会全員会議(総会)に合わせて最上の水準で「被害復旧戦闘」を終わらせるよう指示した。12月の会議とは、1年間を総括して新年の指針を提示するため、近年は年末開催が通例となっているものである。10月21日に慈江(チャガン)道の被害現場を現地指導した際には、11月初めとしていた工期設定を12月初めまでにするよう指示していたため、再延長と言える。

 翌6日付の第1面も洪水被害復旧関連の記事であった。金正恩自身は姿を現さなかったものの、4日と5日の両日に平安北道の復旧作業に動員された建設者たちに贈物を伝達する集会が開かれたとの内容であった。平安北道の道都である新義州(シニジュ)市において11月の平均最低気温は氷点下になる。そのような中で「季節に応じた必需品」が「慈悲深い親(注:金正恩)の体臭が熱く宿っている贈物」として送られたのである。「最高司令官同志の息吹と体臭」(8月27日付)といった表現で、金正恩の「体臭」はたびたび散見される。

 6日付第1面中段は、モスクワ訪問中の崔善姫(チェ・ソニ)外相がウラジーミル・プーチン大統領と面会したことを報じた。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、共著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)など。
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