
「今回の選挙で多くの我が党の同志の皆様方、議席を失われる結果となりました。私自身、本当に深く反省し、お詫びしなければならないと考えておる次第です。」
今月7日、自民党本部9階の大会議室で行われた両院議員懇談会。石破茂総裁は衆議院の総選挙の結果について陳謝し、頭を下げた。30年ぶりとなる与党過半数割れ(2009年の下野は除く)の衝撃から10日余りが経っていた。筆者は自民党191議席という結果を踏まえ、党内の非主流派の議員を中心に石破や森山裕幹事長への責任論が燎原の火の如く広がっていくのではと注視したが、結果的にはこの間、“石破降ろし”“森山降ろし”の動きはほとんど確認できなかった。
しかし、筆者が自民党内を取材するに、表面上は静穏だが地下では執行部への批判がマグマのように溜まっている。
「今回の選挙はさんざんだった。あの2000万円問題が本当に痛かった。石破で参院選を戦うことはあり得ない」
今回の小選挙区で何とか勝利した閣僚経験者の1人は感情を露わに石破や森山らを非難した。こうした執行部批判が冒頭に触れた両院議員懇談会でも吹き荒れるかと思いきや、3時間にわたって行われた懇談会では、石破への即時退陣要求は出なかったようだ。出席者によれば、来年度の予算編成など当面の課題を終えた後で「しかるべき責任を取ってほしいというような発言があった」など抑制された退陣要求はあったものの、批判はその程度に止まったようだ。
「人間ドック」を口実に姿を見せなかった高市
自民党にとって今回の選挙の決定的敗因は、やはり非公認の候補者の党支部へ、公認候補と同額の2000万円を支給したことだ。これを認めたのは党務を仕切る森山であり、それを追認した石破であることは明白なのだが、なぜ公然と批判が上がってこないのか。
自民党関係者は「選挙に負けて、みんな自信喪失している。それどころではないというのが大方の心情だ」と説明する。確かに第2次石破政権は1994年の羽田孜内閣以来となる、与党が衆院で過半数を持たない少数与党内閣でスタートする。11日からの特別国会を前に自民公明の与党は、議席を4倍に伸ばし躍進した国民民主党との政策協議に乗り出したが、玉木雄一郎代表は与党とは是々非々の姿勢で臨む考えを示していて、安定した政権運営は見通せない。
自民関係者「玉木さんはこれから『103万円の壁』や、ガソリン税の上乗せ部分の課税を停止する『トリガー条項』の凍結解除など、個別の政策で高いボールを投げてくるのだろう」
いま、石破に成り代わって総理総裁になるということは「火中の栗」を拾う以外の何物でもないというのが自民党内に漂う空気なのだ。

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