アメリカ次期政権の人事が急ピッチで行われています。「パレスチナ人など存在しない」と公言してきたマイク・ハッカビー元アーカンソー州知事が駐イスラエル大使に指名され、ワクチン懐疑論者のロバート・ケネディ・ジュニアの厚生長官起用で製薬会社の株価が急落するなど、来年1月20日の就任式を待つまでもなく、第2次トランプ政権から世界の政治経済に大きな波紋が広がっています。前回に続いてトランプ2.0をめぐる論考を中心にピックアップしました。
大統領選の帰趨を最後に左右したのは経済問題、とりわけ「あなたの暮らしは4年前に比べて良くなりましたか?」というトランプ陣営からのメッセージが決め手になったとの指摘があります。このフレーズはもともと1980年の勝者、ロナルド・レーガンが使った言葉。トランプ陣営の狙いとしては、中間層の暮らし向きに対するインフレの影響を焦点化するのみならず、ベビーブーマー世代の郷愁に訴えかける意図もあったはずです。
詳しくは以下の本文に譲りますが、過去数十年間における最高の大統領を尋ねた米世論調査では、「トランプ」との回答と「レーガン」との回答が拮抗とのこと。こうした空気を反映してか、9月に発売されたレーガンの最新評伝がべストセラーに名を連ね、改めてのレーガン論も目立ちます。ただし、トランプを保守のレガシーとしてのレーガンに擬することには保守内部からの異論も多く、こうした議論もまた、第2次トランプ政権の輪郭を鮮明化するのに役立ちそうです。
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The End of American Exceptionalism【Daniel W. Drezner/Foreign Affairs/11月12日付】
「[ドナルド・]トランプの1期目と2期目の外交政策には、3つの重要な違いがあると考えられる。まず、トランプは2017年のときより均一的な国家安全保障チームを率いて政権に就くことになる。第2に、2025年の世界の情勢は2017年のときとはかなり異なっている。そして第3に、海外のアクターたちはドナルド・トランプについて、より深く理解している」
「トランプは今度こそ、より自信を持って世界政治を導くことになるだろう。彼が『アメリカ・ファースト』のブランドに世界を従わせることに成功するかどうかは、まったく別の問題だ。しかし、確かなのは、アメリカの例外主義の時代は終わったということだ。トランプ政権下では、米国の外交政策は長年の米国の理想を推進することはなくなるだろう」
米「フォーリン・アフェアーズ(FA)」誌サイトに11月12日付で公開された「アメリカ例外主義の終焉」が、同サイトの人気記事ランキングでトップに座り続けている。
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