ポイント・アルファ (16)

カウントダウン「量子コンピューティング3.0」――日本勢がプレゼンスを発揮する「光量子コンピュータ」|武田俊太郎・東京大学大学院工学系研究科准教授(4)

執筆者:関瑶子 2024年11月27日
エリア: アジア
実はメディアが取り上げる量子コンピュータのニュースは、多くが「超伝導回路方式」によるものだ。しかし、これまで見てきたように量子コンピュータの研究開発では5つの方式が競っている。中でも大規模化にアドバンテージのある「光方式」は、日本が業界を牽引している。(聞き手:関瑶子)

前回の記事はこちら

 長野光と関瑶子のビデオクリエイター・ユニットが、現代のキーワードを掘り下げるYouTubeチャンネル「Point Alpha」。今回は、光量子コンピュータ分野の動向について、東京大学大学院工学系研究科准教授の武田俊太郎氏に話を聞いた。 ※主な発言を抜粋・編集してあります。

一気にスケールアップする可能性を秘めた技術

──武田先生は、量子コンピュータ分野でどのような研究をしているのですか。

「量子コンピュータはいろいろな方式でハードウェアの開発が進められていますが、私はその中でも『光方式』を用いた光量子コンピュータを専門としています」

「光量子コンピュータは、光の粒子である光子を使って演算を行うマシンです。光子を量子コンピュータに用いるメリットとして、大規模化しやすいという点が挙げられます」

「超伝導回路方式量子コンピュータは、冷却装置の中に入れてシステム全体を低温に保たなければならないため、大規模化が難しいという話は先ほどしたと思います」

「また、中性原子方式では、原子一つ一つを量子ビットとして扱うため、異物となりうる他の原子や分子を周囲から徹底的に排除しなければなりません。そのため、真空装置が必要となります」

「このように、量子コンピュータのいくつかの方式には、特殊な環境に量子を置かなければマシンが作れないという制約があります。システムの大規模化の難易度やコストが非常に高いのです」

「光量子コンピュータのメリットは、常温かつ大気中でも問題なく動作する、という点です。量子ビット(光子)の数を増やしていくにあたり、特殊な環境を用意する必要がないということは、開発の上で大きなアドバンテージとなります」

「光量子コンピュータは、一気にスケールアップする可能性を秘めた技術なのです」

カテゴリ: IT・メディア
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
関瑶子(せきようこ) ライター・ビデオクリエイター 早稲田大学大学院創造理工学研究科修士課程修了。素材メーカーの研究開発部門・営業企画部門、市場調査会社、外資系コンサルティング会社を経て独立。You Tubeチャンネル「著者が語る」の運営に参画中。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top