第2次トランプ政権の対外関与と「4つの地域」をめぐる地政学的戦略(下)

4つの地域に向けたジオストラテジー
抑制主義者たちと優先主義者たちは、政策審議を重ねて、様々な国際安全保障問題への対応を検討していくことになる。政権発足初日に出された国家安全保障大統領覚書第1号(NSPM-1)は、国家安全保障会議(NSC)、閣僚級委員会(PC)、副長官級委員会(DC)、政策調整委員会(PCC)、ならびに関連事務局の業務や機能、手続きなどを明示した(https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/01/organization-of-the-national-security-council-and-subcommittees/)。従来からの制度に大きな変更はないが、NSCと国土安全保障会議(HSC)との緊密な連携を意識した制度と手続きが示されている。国家安全保障問題担当大統領補佐官ウォルツは、各省庁からNSC事務局に出向していたスタッフ160名あまりをNSCから離任させ、大統領のアメリカファーストのアジェンダの実現に完全にコミットする人材でNSC事務局を充当すると述べるなど、やはり忠誠心重視の姿勢が顕れた対応が取られている。ウォルツが長官級の集まる閣僚委員会、国家安全保障問題担当筆頭次席補佐官アレックス・ウォンが副長官級委員会、それぞれのとりまとめ役となって、各種政策の見直しや調整などを主導することになるはずである。
ただし、最終意思決定権者はあくまでトランプなので、その予測不能な鶴の一声で様々な政策が変更される可能性はもちろんある。したがって、現時点でできることは、既存の決定を踏まえつつ、大きな取り組みの方向性を様々な可能性のある幅として検討するということであろう。今のところそれは欧州と中東におけるアメリカの防衛負担ないし軍事的関与を減らし、インド太平洋と北米・西半球に安全保障上のリソースを振り向けていくような地政学的な戦略を志向するものとなりそうである。
■欧州
欧州戦略ではトランプだけではなく、抑制主義者も優先主義者も、欧州諸国が欧州防衛のコストの大半を負うべきだとする基本的な考え方で一致しているとみられる。したがって、安全保障面での負担をアメリカから欧州諸国に転嫁していくような二通りの取り組みが展開される可能性がある。

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