
煮え切らない総理に公明・斉藤代表は苛立ち
1月31日、ある夕刊紙が56年の歴史を終えた。産経新聞社の夕刊紙「夕刊フジ」だ。かつて「オレンジ色のニクい奴」という愛称で一時代を築いた「夕刊フジ」だったが、近年、デジタル化の流れに抗いきれなかったようだ。安倍晋三元総理がコラムを書くなど保守色が特徴の媒体であったが、最終号で登場した政治家は、やはり予想通り安倍氏の秘蔵っ子の高市早苗前経済安保担当大臣だった。
単独インタビューの中で高市が「懸念」を示したのは、選択的夫婦別姓の導入に向けた自民党を含めた各党の動きだった。選択的夫婦別姓とは結婚に際し、それまでの姓をそのまま維持することも、配偶者の姓に改めることも、どちらも選択が可能となる制度だ。
「戸籍上も別氏の夫婦を認めれば、親族間で争いが生じる懸念がある」と指摘した上で高市は、社会生活ではそれまでの姓を通称として活用する、通称使用のさらなる推進に力を入れるべきだと持論を展開した。
1月24日から始まった通常国会の冒頭から、選択的夫婦別姓は、大きな火種となり始めている。
公明党・斉藤鉄夫代表「結婚して姓を変えることで多くの方々が何らかの不便や不利益を感じている。国際的にも夫婦同姓を義務化しているのは日本だけ。石破総理は自民党内で検討すると前向きな姿勢を示してくれた。選択的夫婦別姓にどう取り組んでいくのか」(1月28日)
斉藤は衆議院本会議での代表質問で石破茂総理に選択的夫婦別姓への取り組みを質した。選択的夫婦別姓の導入に熱心な公明党は、代表質問が行われる直前には党のプロジェクトチームの第一回目の会合を開き、党としての考えをまとめ、自民党に諮り与党案のとりまとめを急ぎたい考えを示している。
与党協議の場を求める公明に対して、自民党の対応がはっきりしない。こうした苛立ちを込めてか、斉藤は石破の本気度を試すかのように、国会の場で総理、あるいは自民党総裁としての考えを質したのだ。
石破は「自民党総裁として言えば、選択的夫婦別氏制度の是非は、国民の関心が極めて高いテーマであり、いつまでも結論を先延ばしていい問題だとは全く考えていない」などと答弁し自民党としての考えを明確にする姿勢を示した。
「コアな保守層」離反の決定打になり得る
しかし、石破の言動を見ているとやはり本心は揺れているようだ。

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