Weekly北朝鮮『労働新聞』 (105)

金正恩肝いり「平壌総合病院」が5年越しの完工(2025年2月23日~3月1日)

執筆者:礒﨑敦仁 2025年3月3日
タグ: 北朝鮮 金正恩
エリア: アジア
平壌総合病院の完工を伝えるニュースには3ページが費やされた[完成した病院を視察する金正恩国務委員長=2025年2月27日、北朝鮮・平壌](C)AFP=時事
朝鮮労働党創建75周年に合わせて2020年に建設が始められた平壌総合病院が、5年近い工期延長を経て完工した。党創建80年を迎える今年10月に開院するという。朝鮮労働党訪ロ代表団がプーチン大統領と面会し、ロシア与党「統一ロシア」と「多方面の協力拡大及び深化発展に関する2025-2027年議定書」を締結したが、北朝鮮軍の派兵についてはいまだ報じられていない。【『労働新聞』注目記事を毎週解読】

 金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長による軍事関連の動静報道と地方振興策に関するニュースが目立つ1週間であった。

 2月25日付は、金正恩が金日成(キム・イルソン)政治大学を訪問したことについて第1面から第4面にかけて報じた。朴正天(パク・ジョンチョン)朝鮮労働党中央委員会書記や努光鉄(ノ・グヮンチョル)国防相ら党中央軍事委員会の委員たちが同行した。金正恩は演説を行い、「どの世紀、どの国でも武装力の2大要素として軍人と兵器を数えるのが定説」だったが、それに思想を加えて「3大要素」とすべきだとの新見解を披瀝した。「主体的革命武力の最高の軍事政治学院」と位置付けられる大学内の各所を参観したほか、同大学と姜健(カン・ゴン)名称総合軍官学校の教職員間、学生間のサッカー及びバレーボールの試合を観戦したという。

 翌26日付は、姜健名称総合軍官学校を金正恩が現地指導したことについて第1面から第3面上段にかけて報じた。抗日パルチザン活動に参加した「(金日成の)最も忠実な戦友」であり、朝鮮人民軍の初代総参謀長を務めた姜健の名が冠された同校は、初級指揮官育成を担う重要拠点とされる。記事で紹介された随行者は金日成政治大学への訪問時と同じであった。

 金正恩による軍人育成機関への連続訪問は、軍事力強化という長期的目標の一環で必須のものではあろうが、穿った見方をするならば、ロシア・ウクライナ戦争への派兵による潜在的な副作用の抑制をも意図しているかもしれない。

 28日付第1面上段では、26日に金正恩が戦略巡航ミサイルの発射訓練を参観したことについて報じられた。金正恩は満足の意を表明し、「核抑止力の構成部分の信頼性と運用性を持続的に試験してその威力を誇示すること自体が戦争抑止力の責任ある行使になる」などと述べた。金正植(キム・ジョンシク)党中央軍事委員と張昌河(チャン・チャンハ)ミサイル総局長が同行した。

 地方振興策に関する報道が並ぶなか、ひときわ目を引いたのは、28日付第1面下段から第4面上段までにかけて報じられた平壌(ピョンヤン)総合病院完工のニュースである。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、共著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)など。
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