キーワードは「中華文化」。中国と台湾で奇妙な共存を続けてきた「ふたつの故宮」の初共同展を機に、中国の統一工作が始まった。[台北発]中華世界において「文化」の影響力は日本人や欧米人が想像するよりはるかに大きい。なぜなら、「文化」こそが中華五千年の歴史を現在に伝える唯一の遺産であり、その保有者は歴史継承のレジティマシー(正統性)を証明できるからだ。過去に権勢を極めた中国歴代王朝の皇帝たちの多くが文物収集に血道を上げたのもそのためだった。 中華文化の粋を集めた故宮博物院は、中華の核心的価値である「文化」のありかを内外に広く知らしめる場所である。ところが現在、中国・北京と台湾・台北に同名の故宮博物院が存在している。「ふたつの故宮」の奇妙な共存は、中華を二つに割った共産党と国民党の内戦がいまなお未決着であることの証左でもある。

「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン