産業再生の鍵を握るハゲタカ・ファンド

執筆者:安西巧 2001年2月号
エリア: 北米 アジア

潤沢な資金と豊富な経験を持つ欧米系のハゲタカ・ファンドの日本上陸が相次ぐなか、不動産投信市場開設も三月に迫った。機能不全に陥った金融機関に代わり、企業の資金需要に応えるリスクマネー。その動向が日本の産業再生の命運を握っている。「いま、キャッシュが豊富なのは外資か、ベンチャーキャピタル。銀行に融資を頼んでもムダだというのが、身に沁みてわかった」 一月下旬に本社ビルの証券化などの新たなリストラ策を公表した水産最大手マルハの中堅幹部は、こう苦笑する。 皇居・大手門の向かい、千代田区大手町一丁目一番地。日本のビジネス街の中心に位置する本社ビルは、マルハにとってまさに“虎の子”の資産だが、子会社支援損などで発生する三百五十億円の特別損失を今期に処理するため、やむなく特別目的会社(SPC)に売却する。SPCがビルを担保に発行する証券の買い手は、もっぱら海外の機関投資家とみられ、マルハは百八十五億円の売却益を手にする算段だ。

カテゴリ: 経済・ビジネス 政治
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執筆者プロフィール
安西巧(あんざいたくみ) ジャーナリスト 1959年福岡県北九州市生まれ。1983年早稲田大学政治経済学部政治学科卒、日本経済新聞社入社。主に企業取材の第一線で記者活動。広島支局長、編集委員などを歴任し、2024年フリーに。フォーサイトでは「杜耕次」のペンネームでも執筆。著書に『経団連 落日の財界総本山』『広島はすごい』『マツダとカープ 松田ファミリーの100年史』(以上、新潮社)、『さらば国策産業 電力改革450日の迷走』『ソニー&松下 失われたDNA』『西武争奪 資産2兆円をめぐる攻防』『歴史に学ぶ プロ野球16球団拡大構想』(以上、日本経済新聞出版)など。
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