中東―危機の震源を読む (4)

混迷のレバノン史に新たなページは開くのか

 二月十四日にハリーリー前首相が爆殺され、レバノン社会に走る亀裂が急速に表面化した。反シリア感情が高まり異例の自発的な反政府・反シリアデモが湧き起こるなか、二月二十八日にカラーミ首相は内閣総辞職を発表した。 直接の発端は二〇〇四年九月に親シリアのラフード大統領の続投を可能にする憲法改正が、シリアの意向を受けてレバノン国会で強行されたことにある。これに対してレバノン駐留シリア軍の撤退と民兵組織――事実上はイスラーム教シーア派組織ヒズブッラー(ヒズボラ)――の解体を要求する国連安保理決議一五五九が、米仏主導で採択され、呼応した閣僚の辞任に続き、十月にハリーリー自身が首相を辞していた。

カテゴリ:
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top