『国際政治』高坂正堯著中公新書 1966年刊 安全保障に関する本を一冊選んで議論せよとの課題を与えられ、どの本を採り上げるか考えた。時代を経てなお読む価値があり、かつわかりやすい本の紹介がこのページの狙いだとすれば、高坂正堯著『国際政治』は、日本人の筆になるこの分野の書物としては最もふさわしい一冊だろう。 高坂氏が亡くなったのは一九九六年五月十五日である。ちょうど九年になる。生前はテレビにもしばしば出演し、思い切った発言をおだやかな京都弁で包み込むようにされていた。いまの若者たちはそれを知らない。であればこそ、いま氏の著作を紹介する作業には意味がある。世界にとって冷戦後のユーフォリア(陶酔感)は遠い昔となり、権力政治の再現が感じられる時となればなおさらである。
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