這い上がる道としてのサッカー

執筆者:星野 智幸 2013年9月30日
エリア: 中南米

 2011年7月1日の深夜25時ごろ、私はパソコンの前に釘づけになっていた。カタールで開かれたAFCフットサルクラブ選手権の決勝、名古屋オーシャンズ対シャヒド・マンスーリFC(イラン)が、オンラインで中継されていたのだ。勝てば日本チームが初のアジアチャンピオンに輝く試合だったが、アジアのフットサル界では圧倒的な強豪であるイランのクラブの前に、名古屋オーシャンズは防戦一方、前半のうちに2点をリードされ、後半開始早々にも退場者を出すなど、非常に苦しい試合運びを強いられていた。ところがそのピンチをしのぐと、劣勢のまま執念で同点に追いつき、延長後半にはついに勝ち越しゴール。奇跡の優勝を遂げたのだった。大震災からまだ4カ月、なでしこジャパンのワールドカップ逆転優勝に先立つことおよそ2週間。モザイクのかかったような劣悪な中継映像を前に、私はTwitterを通じて同好の士たちと深い感激を分かち合った。

カテゴリ: スポーツ
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執筆者プロフィール
星野 智幸(ほしのともゆき) 作家。1965年ロサンゼルス生れ。早稲田大学第一文学部を卒業後、新聞記者をへて、メキシコに留学。1997年『最後の吐息』(文藝賞)でデビュー。2000年『目覚めよと人魚は歌う』で三島由紀夫賞、2003年『ファンタジスタ』で野間文芸新人賞、2011年『俺俺』で大江健三郎賞を受賞。著書に『ロンリー・ハーツ・キラー』『アルカロイド・ラヴァーズ』『水族』『無間道』などがある。
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