中東―危機の震源を読む
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改宗者裁判が問う「自由」と「寛容」の意味
アフガニスタンと欧米諸国の間で紛糾していた「改宗者問題」は、三月二十九日、イスラーム教からキリスト教への改宗を撤回しなかったアフガニスタン人がイタリアに亡命することで一応の幕引きがなされた。 亡命したのはアブドル・ラフマーンという男性で四十一歳とされる。パキスタンでアフガニスタン難民救助のための医療援助団体のもとで働いていた一九九〇年前後にキリスト教に改宗したという。九〇年代の多くをドイツに暮らし、二〇〇二年にアフガニスタンに帰国して娘をドイツに連れ帰ろうとしたところ、親族から「キリスト教に改宗した男」には親権がないとの申し立てがなされた。本人が改宗の事実を認めたために逮捕され、「イスラーム教に対する攻撃」という重大犯罪として治安裁判所への訴追がなされた。改宗を撤回せず死刑判決の見通しとなったところで国際的に報じられ、ローマ法皇の嘆願や米国、イタリア、ドイツといった各国政府からの批判が相次ぎ、急転直下の灰色決着となった。

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