「CO2規制強化案」を不安視する米民主党候補

執筆者:足立正彦 2014年6月9日
タグ: アメリカ
エリア: 北米

 米環境保護局(EPA)のジーナ・マッカーシー長官は6月2日、現在稼動している米国内の火力発電所から排出されている二酸化炭素(CO2)を大幅に削減するための規制強化案を初めて公表した。この案では、CO2を2030年までに2005年比で30%削減し、心臓疾患や肺疾患をもたらす煤煙、二酸化硫黄、窒素酸化物(NOx)などの削減を図ることを目指している。

 公表されたEPA規制強化案については今後、有権者からの意見聴取などのプロセスを経て1年後の2015年6月に最終規制強化案が公表され、バラク・オバマ大統領の任期が終わる約半年前の2016年6月の正式発効を目指している。オバマ大統領は第2期政権1年目の2013年6月にワシントンDCにあるジョージタウン大学において「気候行動計画(Climate Action Plan)」に関する重要演説を行っている(http://www.whitehouse.gov/the-press-office/2013/06/25/remarks-president-climate-change)。EPA規制強化案では米国内で最も多くのCO2を排出している石炭火力発電所を標的にすることで、2017年1月の大統領退任までに気候変動対策に取り組むとのオバマ大統領の公約を実現する狙いがあり、EPA規制強化案はオバマ大統領が重視する気候変動対策の中で中核的な役割を担うことになる。こうした姿勢からも、オバマ大統領が政権第2期の最優先政策課題の1つとして気候変動対策をいかに重視しているかがわかる。この案が正にオバマ大統領の在職中の「レガシー(遺産)」作りを狙ったものであることは明白だ。

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執筆者プロフィール
足立正彦(あだちまさひこ) 住友商事グローバルリサーチ株式会社シニアアナリスト。1965年生まれ。90年、慶應義塾大学法学部卒業後、ハイテク・メーカーで日米経済摩擦案件にかかわる。2000年7月から4年間、米ワシントンDCで米国政治、日米通商問題、米議会動向、日米関係全般を調査・分析。06年4月より、住友商事グローバルリサーチにて、シニアアナリストとして米国大統領選挙、米国内政、日米通商関係、米国の対中東政策などを担当し、17年10月から米州住友商事ワシントン事務所に勤務、20年4月に帰国して現職。
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