ウクライナ最新ルポ:定着する「脱露入欧」高まる国家意識

執筆者:名越健郎 2014年8月27日
エリア: ヨーロッパ

 今年2月に独立後最大の騒乱が起きたウクライナは、東部の内戦、クリミア喪失を抱え、重大な国家的危機に直面している。首都キエフは活気がなく、エネルギー不足で灯火管制が敷かれ、夜は暗く、人影も少ない。生活苦で治安が悪化しているようで、観光客も激減した。希望は、「脱露入欧」という新しい民族意識が社会に定着したことだろう。深まる生活苦に国民がどこまで耐えられるか、ポロシェンコ新政権は厳しいかじ取りを強いられる。

 

革命聖地が正常化

 ウクライナ当局は8月9、10の両日、革命の聖地となった首都キエフ中心部の広場「ユーロマイダン」からようやくテントやバリケードを撤去した。それまで、マイダンは交通が遮断され、活動家らがテントを設営して居座りを続け、炊き出しをしながら生活していた。赤と黒のウクライナ民族主義者の旗や西部の民族主義者ステファン・バンデラの写真が掲げられ、屋台の土産物屋が並ぶ。プーチン大統領を揶揄するTシャツやヤヌコビッチ元大統領を描いたトイレットペーパーも売られていた。

フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
名越健郎(なごしけんろう) 1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長、編集局次長、仙台支社長を歴任。2011年、同社退社。拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学特任教授を経て、2022年から拓殖大学特任教授。著書に、『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書)、『ジョークで読む世界ウラ事情』(日経プレミアシリーズ)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top