ブックハンティング・クラシックス
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外交の「地味な道具立て」を論じて外交の本質を把握させる不思議
『外交』ハロルド・ニコルソン著/斎藤眞・深谷満雄訳東京大学出版会 1968年刊 四十年ほど前、私は本書を義務感から読んだ。本書は外交官や国際政治学徒の「必読書」だという声が当時、囂しかったからだ。読んで得たものは無論あった。外交の「政策」と「交渉」とを、つまり、外交の「立法的」側面と「執行的」側面をきちんと区別せよ、とか、ウィルソン米大統領の登場で時代精神となるかに見えた「公開外交」の「公開」性とは「政策」論議には必要だが、「公開の交渉などまったく実行不能」とかのくだりには傍線を引いた。「交渉」に携わる職業外交官の「徳性の第一は誠実である」の指摘にも傍線を引いた。それらが著者の基本的主張だからだ。まるで暗記事項のように、私はそれらを記憶した。が、正直、これで「学徒の義務」のひとつは果たしたとの気持の方が強かった。
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