饗宴外交の舞台裏 (116)

ホワイトハウスを盛り上げた名物シェフの“デザート外交”

執筆者:西川恵 2007年9月号
エリア: アジア

 ホワイトハウスのデザート担当シェフで、三年前に引退したローランド・メスニエール氏(六三)が本を出した。題して『大統領のお菓子のすべて――二十五年間のホワイトハウス』。外国の賓客が喝采した創意工夫を凝らしたデザート、お菓子が取り持った米大統領夫妻、家族との交流など、デザートがホワイトハウスの中で占める大きな役割を明らかにしている。 米社交界で同氏を知らぬ人はいなかった。国賓歓迎宴や記念の饗宴の度に「今度はどんなデザートか」が話題になった。 例えばイラク戦争が終結した二〇〇三年のブッシュ大統領の誕生日(七月六日)。同氏はチョコレートで作った空母に、これもチョコレートの戦闘機が着艦する模様をデコレーションケーキにした。マジパン(挽いたアーモンドと砂糖、卵を練り合わせたもの)で作った二匹のイヌとネコも艦上で待ち受ける。「誕生日おめでとう、トップガン」と書かれた砂糖菓子の旗。

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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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