饗宴外交の舞台裏 (125)

対立を抱えた米露両国

執筆者:西川恵 2008年6月号
エリア: 北米 ヨーロッパ

 ロシアのプーチン大統領の“引退”を五月七日に控えた四月五、六の両日、同大統領とブッシュ米大統領の最後の会談がロシア南部のソチで行なわれた。 両首脳はこの七年間に二十七回会い、率直に考えを伝える関係を作ってきた。互いに別荘に招くなどウマも合った。初会談はブッシュ大統領が就任して五カ月後の二〇〇一年六月、スロベニアだった。このときブッシュ大統領は「プーチンとは心が通じ合える」と語っている。 現在、両国は米国の欧州でのミサイル防衛(MD)施設建設、北大西洋条約機構(NATO)へのウクライナとグルジアの加盟問題、コソボのセルビアからの独立など、多くの対立を抱えている。ただ米大統領はこれを首脳の個人的関係で補うことで、両国が感情的対立に陥らないよう気を配ってきた面がある。プーチン大統領も同様で、9.11テロの際には、各国首脳の中で真っ先に米大統領に電話した。

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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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