昨今の槙原稔ほど、その言動に興味を掻き立てられる日本人経営者はいない。三菱商事会長であるとともに、「金曜会」(三菱系企業の社長会)の世話人代表として三菱グループ総帥といえる立場にあり、瓦解寸前の旧財閥の行く末を一身に託されている。 昨年、三菱自動車工業が度重なる不祥事と業績不振で破綻の危機に瀕した際、槙原は「三菱は国籍など問わない」と言い、ダイムラークライスラーによる救済劇のお膳立てをした。三菱グループ内から当然のように湧き起こった「スリーダイヤブランドを外資に売り渡す気か」という批判を、「純血よりも、大切なのは理念」と撥ねつけ、そのスタンスは少しも揺るがなかった。

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