「東電倒産」は止められない

執筆者:安西巧 2011年5月24日
エリア: アジア
東電の次期社長に就任する西澤俊夫常務。左は退任する清水正孝社長 (C)時事
東電の次期社長に就任する西澤俊夫常務。左は退任する清水正孝社長 (C)時事

 政府やメガバンクが必死になって食い止めようとあがいている東京電力の「倒産」。福島第1原子力発電所の事故に対する電力業界ぐるみの損害賠償策を作っても、未曾有の事故直後に“敵前逃亡”した社長のクビをすげ替えても、失われた信用は回復せず、資本の論理によって、この会社が市場から退場を迫られるのは避けられない。賠償策決定後も、社長更迭を明らかにした決算発表後も、東電の株価下落は歯止めがかからず、社債スプレッドなど信用リスクも高まっている。存続理由が「賠償の履行」に凝縮される異常な状況下に置かれた時点で、その会社の命脈はすでに絶たれているのである。

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執筆者プロフィール
安西巧(あんざいたくみ) ジャーナリスト 1959年福岡県北九州市生まれ。1983年早稲田大学政治経済学部政治学科卒、日本経済新聞社入社。主に企業取材の第一線で記者活動。広島支局長、編集委員などを歴任し、2024年フリーに。フォーサイトでは「杜耕次」のペンネームでも執筆。著書に『経団連 落日の財界総本山』『広島はすごい』『マツダとカープ 松田ファミリーの100年史』(以上、新潮社)、『さらば国策産業 電力改革450日の迷走』『ソニー&松下 失われたDNA』『西武争奪 資産2兆円をめぐる攻防』『歴史に学ぶ プロ野球16球団拡大構想』(以上、日本経済新聞出版)など。
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