国際人のための日本古代史 (17)

「暗君」と歴史の裁き

執筆者:関裕二 2011年7月4日
タグ: 日本

 政治家は時折、「歴史に判断を委ねたい」と述べる。多くの場合、「歴史に判断を委ね」るまでもない、明らかに誤った判断なのだが、確かに歴史を経るにつれてその人物の評価が変わっていくことがある。
 また、暗君であるにもかかわらず、「正義の人」と誤って語り継がれている者も少なくない。
 暗君は、手柄を横取りし、責任を他人に擦り付ける達人だから、身内や政敵に恨まれても、後の世に偉人と称えられることが少なくなかった。
 たとえば平安前期の権力者・藤原時平(ふじわらのときひら)は、改革を推し進めていた菅原道真を讒言(ざんげん)によって大宰府に左遷し(実質的な流罪)、事業を奪った。藤原時平は改革者として歴史に名を留めたが、菅原道真の祟りに脅え、早死にする。仕事のできる人間を妬み、斥けた藤原時平は、典型的な暗君である。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
関裕二(せきゆうじ) 1959年千葉県生れ。仏教美術に魅せられ日本古代史を研究。武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー。著書に『藤原氏の正体』『蘇我氏の正体』『物部氏の正体』、『「死の国」熊野と巡礼の道 古代史謎解き紀行』『「始まりの国」淡路と「陰の王国」大阪 古代史謎解き紀行』『「大乱の都」京都争奪 古代史謎解き紀行』『神武天皇 vs. 卑弥呼 ヤマト建国を推理する』など多数。最新刊は『古代史の正体 縄文から平安まで』。
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