リビアのカダフィ大佐が10月20日、反カダフィ派によって連行される過程で銃撃され、血まみれで殺されるという悲惨な最期を遂げた。北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記はこの映像をどのような気持ちで見つめていたのだろうか。
おそらく、金正日総書記はカダフィ大佐に自分の将来の姿を見るのではなく「カダフィ、欧米を信じるからこうなるのだ。俺はお前のようにはならない」と考えただろう。リビアのカダフィ派が敗北したのは、北大西洋条約機構(NATO)軍の空爆を受けても、NATOを攻撃できる手段を持たなかったからだ、と。
その意味で、リビア情勢の結末は、長い目では世界の独裁体制の強力な一角が崩れた意味を持つにしても、北朝鮮が自ら核、ミサイル、生物化学兵器という大量殺傷兵器を放棄する可能性をさらに低めたともいえる。北朝鮮が国内の統制をさらに強化するのは間違いなく、中東の民主化の波は、当面は、東アジアでは圧政強化の口実となるかもしれない。

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