首相によるプラント輸出のセールス行脚に電力各社の再稼働申請ラッシュ――。
東京電力福島第1原子力発電所の事故を機に「見直し」が進むはずだった原発推進政策が、再び“国策”の様相を帯び始めている。
きっかけは言うまでもなく、昨年12月の政権交代。アベノミクス効果で早々に株価を押し上げた安倍晋三首相(58)は、高支持率を背景に7月21日投票の参院選後、こうした「原発逆コース」路線を一段と鮮明にする公算が大きい。
だが、原発の安全を担う規制機関は体制に不安が伴う。原子力規制委員会は独立性の強い『3条委員会』になったとはいえ、事務局として支える原子力規制庁のスタッフは、福島事故に際して“使い物にならなかった”あの原子力安全・保安院や原子力安全委員会、文部科学省環境モニタリング部門などからの横滑りなのである。自前の人材育成に力を注ぐとはいっても、長年染み付いた馴れ合いのカルチャーを180度変えるのは至難の業だ。安倍政権の閣僚は「安全が確認された原発から再稼働」と唱えるが、名称が変わっただけで人員は変わらない組織が確認する「安全」に、果たしてどんな意味があるのか。

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