李御寧さんはやはり「文化の魔術師」である。『ジャンケン文明論』(新潮新書)では、われわれが慣れ親しんできた「ジャンケン」を通じて、私たちを取り巻く文化の過去、現在、未来をまた見事に分析してくれた。 西洋の子どもはコインを投げて何かを決めるが、アジアの子どもはジャンケンで決める。コイン投げには裏と表という相反する対立しかないが、ジャンケンではグー、チョキ、パーという三すくみの関係性の世界が広がる。 李御寧さんによる、こんな導入からして「なるほど」と思ってしまう。そして次第に古今東西の言葉や行為、概念を自由自在に引き出しながら展開される「李御寧ワールド」にはまってしまう。

「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン