「DNA親子鑑定」に見る「科学」と「法律」のタイムラグ

執筆者:藤沢数希 2014年1月11日
タグ: ドイツ 日本

 無味乾燥な法律の条文に、なんらかの文学的な喜びを見出すことは難しいのだが、次の一文には筆者は深い感銘を覚える。

 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。

(日本国民法第772条)

この条文を書くときに、「推定」という言葉を選んだ法律家には、人間の男女の絆とその脆さを活き活きと描き出す類まれな才能があったのではないだろうか。そうである。男には、自分の子供が本当に自分の子供だと確かめる術はなかったのである。少なくとも、DNA親子鑑定などの検査技術が普及する、最近までは。

 最近、お茶の間を賑わした事件と言えば、元光GENJIで俳優の大沢樹生さんが、女優の喜多嶋舞さんとの離婚に伴い、引き取り育てていた16歳の長男が、DNA親子鑑定の結果、自分の子供ではないことが判明した、と発表したことだろう(週刊女性 2013年12月24日発売)。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
藤沢数希(ふじさわかずき) 理論物理学、コンピューター・シミュレーションの分野で博士号取得。欧米の研究機関で研究職に就いた後、外資系投資銀行に転身。以後、マーケットの定量分析、経済予測、トレーディング業務などに従事。また、高度なリスク・マネジメントの技法を恋愛に応用した『恋愛工学』の第一人者でもある。月間100万PVの人気ブログ『金融日記』の管理人。著書に『なぜ投資のプロはサルに負けるのか?』(ダイヤモンド社)『日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門』(同)『「反原発」の不都合な真実』(新潮社)『外資系金融の終わり―年収5000万円トレーダーの悩ましき日々』(ダイヤモンド社)など。
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