クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

遠慮会釈ないハマスが持ち込んだ絶望

執筆者:徳岡孝夫 2006年3月号
エリア: 中東

 英語になりにくい日本語の一つに「遠慮」がある。含みの多い語なので、使う人の立場や背景を知らないと正しく翻訳できない。 日本の赤軍兵士三人がイスラエルのテルアビブ空港で自動小銃を乱射した(死者二十六人)一九七二年五月、私は羽田空港へ駆けつけ、取り敢えず「テルアビブ一枚」と切符を買った。それからカウンターの上に「ABCブック」を広げ、最も早く現地に着く便を探した。 JALはユダヤ国家には着陸しない。なぜならイスラエルはアラブの不倶戴天の敵だし、アラブは日本へのアブラの大供給源(下手な駄ジャレ)だから、日本航空はアラブに遠慮してユダヤの土を踏まないのである。

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執筆者プロフィール
徳岡孝夫(とくおかたかお) 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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