次は「アブハジア」「南オセチア」併合? プーチンの「旧ソ連圏再編戦略」

執筆者:名越健郎 2015年6月10日
エリア: ヨーロッパ アジア

 ロシアが昨年のウクライナ領クリミア強制併合に続いて、グルジア領のアブハジア自治共和国と南オセチア自治州も併合する動きを強めている。ロシアは両地域と軍事・経済上の「同盟・統合条約」に調印し、欧米諸国は「グルジアの主権・領土保全の侵犯」(ドイツ外務省)と反発した。欧米諸国が今夏で期限切れとなる対露制裁を延長するなら、ロシアは対抗して両地域編入に踏み切る可能性があり、欧州国境の新たな変更につながりかねない。

 

軍を統合、国境廃止

 わが国ではあまり報じられなかったが、クリミア編入1周年の今年3月18日、プーチン大統領はクレムリンで、南オセチアのチビロフ「大統領」と会談し、統合条約に調印した。条約は、南オセチア部隊のロシアへの編入や住民往来の自由化、南オセチア住民の国籍取得簡素化、年金・教育の提供などを盛り込んでいる。クリミアのような完全編入ではないが、軍を統合し、国境を解消することで併合へ一歩近づいた。プーチン大統領は調印後、「双方のパートナー関係強化に新たな措置がとられた」と述べた。条約は上院での批准を経て成立する。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
名越健郎(なごしけんろう) 1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長、編集局次長、仙台支社長を歴任。2011年、同社退社。拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学特任教授を経て、2022年から拓殖大学特任教授。著書に、『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書)、『ジョークで読む世界ウラ事情』(日経プレミアシリーズ)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
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