ロシア軍の「シリア空爆」:隠れた狙いは「原油価格上昇」

執筆者:名越健郎 2015年10月2日
エリア: 中東 ヨーロッパ

 ロシア軍のシリアでの空爆作戦は、旧ソ連圏以外では、ソ連軍によるアフガニスタン介入(1979-89年)以来の軍事行動となった。アフガン介入後の本格的な軍事作戦としては、2次にわたるチェチェン戦争、2008年のグルジア戦争、14年のウクライナ介入があるが、新生ロシアとしては初の旧ソ連圏域外への軍事介入となった。中東での軍事作戦発動は、ソ連時代を通じても初めて。その背景には多くの動機があるが、隠された狙いは、中東の地政学リスクを高めて原油価格を引き上げ、苦境のロシア経済を浮揚させることだろう。

「中東への影響力」と「長期借款」

 プーチン大統領は9月30日、政府幹部との会議で、「アサド大統領から軍事支援の要請を受け、国際法に基づき、対テロ作戦を行う」と述べ、作戦は一定期間の空爆に限定し、地上戦は行わないと明言した。大統領は空爆直前の国連総会の演説で、①アサド政権は正統な政権であり、シリア問題は政権を通して解決すべきだ②「イスラム国」は人類の主要な敵であり、ロシアはこの認識を共有する諸国と協力する――の2点を強調していた。

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執筆者プロフィール
名越健郎(なごしけんろう) 1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長、編集局次長、仙台支社長を歴任。2011年、同社退社。拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学特任教授を経て、2022年から拓殖大学特任教授。著書に、『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書)、『ジョークで読む世界ウラ事情』(日経プレミアシリーズ)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
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