「北方領土・極東」でも「軍備拡張」に走るロシアの危険度

 世界的に軍事戦略を拡張するロシアが、北方領土を含む極東でも軍備近代化を強化している。ショイグ国防相は3月25日、クリル(千島)諸島に新型の地対艦ミサイル、バスチオン(射程300キロ)とバール(同130キロ)、偵察用無人機を年内に配備すると発表した。カムチャツカ半島の海軍基地にも昨年、ボレイ級の新型戦略原潜、「アレクサンドル・ネフスキー」が配備されたばかり。欧州、中東方面に続き、極東でも米国に対抗する構えだが、経済危機さ中の軍備拡張路線は尋常ではない。

択捉にミサイル配備か

 同国防相は千島列島のどこに地対艦ミサイルを配備するか言及しなかったが、軍事基地が置かれているのは択捉、国後両島だけで、択捉島と思われる。択捉には第18機関銃砲兵師団(約3000人)、国後には第46機関銃砲兵連隊(約1000人)が駐留し、いずれも日米両軍の上陸阻止を想定した島嶼防衛の地上部隊だが、攻撃型戦力が初めて配備されることになる。バスチオンは沿海地方の部隊に配備されているだけで、極東では2カ所目。北方領土の実効支配を強化するとともに、日米の艦船、ひいては中国艦船をけん制する狙いもありそうだ。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
名越健郎(なごしけんろう) 1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長、編集局次長、仙台支社長を歴任。2011年、同社退社。拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学特任教授を経て、2022年から拓殖大学特任教授。著書に、『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書)、『ジョークで読む世界ウラ事情』(日経プレミアシリーズ)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
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