「崩壊」は自動車だけではない「三菱最強伝説」の虚構

執筆者:安西巧 2016年5月27日
ゴーン氏はともかく、益子氏は笑っている場合ではないだろう(C)時事

 

 日産自動車による出資額2370億円のM&A(買収・合併)によって瞬く間に収束した感のある、三菱自動車の燃費データ不正問題。しかし、5月12日の記者会見で、日産社長兼最高経営責任者(CEO)のカルロス・ゴーン(62)と握手した際の三菱自会長兼CEO、益子修(67)の笑顔に釈然としない思いを抱いた関係者は少なくない。リコール(回収・無償修理)隠しや大型トレーラーのタイヤ脱輪による母子3人死傷事故などが引き起こした過去の危機では、支援の手を差し伸べた三菱「御三家」(三菱重工業、三菱商事、三菱東京UFJ銀行)さえ、今回は「3度目はない」と見放した。そんな自動車メーカーが救済されたことを、主力工場を抱える自治体や政府は両手を挙げて歓迎しているが、果たしてこんな腐りきった会社を救う価値があったのか。

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執筆者プロフィール
安西巧(あんざいたくみ) ジャーナリスト 1959年福岡県北九州市生まれ。1983年早稲田大学政治経済学部政治学科卒、日本経済新聞社入社。主に企業取材の第一線で記者活動。広島支局長、編集委員などを歴任し、2024年フリーに。フォーサイトでは「杜耕次」のペンネームでも執筆。著書に『経団連 落日の財界総本山』『広島はすごい』『マツダとカープ 松田ファミリーの100年史』(以上、新潮社)、『さらば国策産業 電力改革450日の迷走』『ソニー&松下 失われたDNA』『西武争奪 資産2兆円をめぐる攻防』『歴史に学ぶ プロ野球16球団拡大構想』(以上、日本経済新聞出版)など。
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