日本も参加した第1回ハーグ平和会議(1899年)で設立された常設仲裁裁判所が、南シナ海問題で中国に全面的に不利な判決を下したところ、判決は紙くずに過ぎないなどと、法治国家の常識からかけ離れた反応を中国は示した。そうした中でも、柳井俊二元駐米大使を「右翼」と攻撃し、今回の判決の黒幕呼ばわりしたことに、「なぜ?」と首をかしげた読者も多かっただろう。
柳井氏は外務省を退官後、2011年10月に国際海洋法裁判所所長に就任。任期中に、今回の裁判を担当した仲裁人(判事)5人のうちの4人を任命したことを挙げて、公平性に問題があると中国が言いがかりをつけているのだ。しかし、中国が騒ぎ立てるのには、より深いところに理由がありそうだ。

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