中東―危機の震源を読む
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トルコ軍侵攻はシリア内戦の構図をどう変えるか
トルコは8月22日からシリア北部の国境地帯ジャラーブルス(Jarabulus)に砲撃を開始し、24日からは戦車部隊を侵攻させて制圧した。トルコ軍は米国などの空爆支援を受け、現地のシリア反体制派諸派と連携している模様だ。2012年にシリア内戦が本格化して以来、トルコの直接的な大規模な侵攻作戦はこれが初めてである。
トルコは侵攻の理由として、表向きは、ジャラーブルスを制圧していた「イスラーム国」の撃退を謳っており、戦果を誇って見せているが、実態はシリア北部で伸長するクルド人勢力のこれ以上の拡大の阻止こそが、侵攻の最大の目的であると思われる。「イスラーム国」勢力はなぜかジャラーブルスからほとんど抵抗せずに退去している。トルコは部隊の増派を続け、南方のマンビジュからジャラーブルスに接近したクルド人武装勢力の人民防衛隊(YPG)に対して砲撃を行っている。

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