サイバーウォー・クレムリン (4)

中露が主張する「サイバー主権」の実態

執筆者:小泉悠 2017年8月2日
ロシア外務省が「偽ニュース」と見なした欧米メディアの報道(ロシア外務省のウェブサイトより)(C)時事

 これまでの小欄で紹介してきたように、ロシア政府は、西側が情報戦によって「カラー革命」などの内乱を旧ソ連諸国や中東の権威主義的国家で引き起こし、「形を変えた侵略」を仕掛けているとの認識を抱いてきた。

 このような一種の陰謀論的世界観に拍車をかけたのが、2014年2月のウクライナ政変である。これによってロシアにとって御し易いヤヌコーヴィチ政権(一般的に「親露政権」と呼ばれるが、利権次第でロシア側にもつくというのが実際であった)が倒れ、反露政権がウクライナに成立したことは、ロシア側の目には「カラー革命」の最新バージョンと映った。そして、ロシア政府は、このような「戦争に見えない戦争」あるいは「形を変えた侵略」がロシアやその友好諸国にも及ぶ可能性があるとの主張をさらに強化するようになっていった。

カテゴリ: 政治 IT・メディア
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執筆者プロフィール
小泉悠(こいずみゆう) 東京大学先端科学技術研究センター准教授 1982年千葉県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修了。民間企業勤務を経て、外務省専門分析員、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所客員研究員として2009年~2011年ロシアに滞在。公益財団法人「未来工学研究所」で客員研究員を務めたのち、2019年3月から現職。専門はロシアの軍事・安全保障。主著に『軍事大国ロシア 新たな世界戦略と行動原理』(作品社)、『プーチンの国家戦略 岐路に立つ「強国」ロシア』(東京堂出版)、『「帝国」ロシアの地政学 「勢力圏」で読むユーラシア戦略』(同)。ロシア専門家としてメディア出演多数。
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