マネーの魔術史 (23)

経済成長が実現したために金本位制が機能した

執筆者:野口悠紀雄 2017年11月2日
エリア: ヨーロッパ
(C)AFP=時事

 

 シュバリエの予測の問題に戻ろう。彼はゴールドラッシュがインフレーションを引き起こすと予測した。16世紀にスペインの植民地で発見された大量の銀がヨーロッパに持ち込まれ、価格革命と言われた価格高騰をもたらしたことを考えると、これは自然な予測だ。しかし実際には、19世紀は歴史的な価格安定期となったのだ。なぜだろうか?

 いくつかの理由がある。

 第1に、19世紀のゴールドラッシュが起きたとき、経済で使用されるマネーの総量と金の存在量は、直接にはリンクしていなかった。前回見たように、金準備よりもはるかに多くの紙幣が発行され、それが流通していた。

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執筆者プロフィール
野口悠紀雄(のぐちゆきお) 1940年東京生まれ。東京大学工学部卒業後、大蔵省入省。1972年エール大学Ph.D.(経済学博士号)取得。一橋大学教授、東京大学教授などを経て、現在、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論。1992年に『バブルの経済学』(日本経済新聞社)で吉野作造賞。ミリオンセラーとなった『「超」整理法』(中公新書)ほか『戦後日本経済史』(新潮社)、『数字は武器になる』(同)、『ブロックチェーン革命』(日本経済新聞社)、『マネーの魔術史』(新潮選書)、『AI時代の「超」発想法』(PHPビジネス新書)など著書多数。公式ホームページ『野口悠紀雄Online』【http://www.noguchi.co.jp
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