「君主号」の世界史 (8)

統一と解体

執筆者:岡本隆司 2018年7月7日
エリア: アジア
唐王朝を中絶させ、女帝として君臨した則天武后。自らを仏教における至上の王「金輪王」になぞらえた

 

 ひとり「天王」の事例をあげよう。前秦の苻堅である。当時たくさんいた天王の中では、めずらしく皇帝に即位しなかった。できなかった、といったほうがよい。

 それなら偉大ではなかったのか、といえば、さにあらず、五胡十六国のうち最も名君の誉れ高く、勢力を張った君主だった。五胡諸族を従えて華北をまとめ、江南半壁を保っていた東晋に挑戦したのである。そんなことができたのは、この時代、苻堅だけだった。

カテゴリ: 社会 政治 カルチャー
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執筆者プロフィール
岡本隆司(おかもとたかし) 京都府立大学文学部教授。1965年、京都市生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。専門は近代アジア史。2000年に『近代中国と海関』(名古屋大学出版会)で大平正芳記念賞、2005年に『属国と自主のあいだ 近代清韓関係と東アジアの命運』(名古屋大学出版会)でサントリー学芸賞(政治・経済部門)、2017年に『中国の誕生 東アジアの近代外交と国家形成』で樫山純三賞・アジア太平洋賞特別賞をそれぞれ受賞。著書に『李鴻章 東アジアの近代』(岩波新書)、『近代中国史』(ちくま新書)、『中国の論理 歴史から解き明かす』(中公新書)、『叢書東アジアの近現代史 第1巻 清朝の興亡と中華のゆくえ 朝鮮出兵から日露戦争へ』(講談社)、『悪党たちの中華帝国』(新潮選書)など多数。
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