「君主号」の世界史 (24)

「大君」とその変貌

執筆者:岡本隆司 2019年2月23日
「大君」征夷大将軍を対外的にどう呼ぶか――新井白石(右)は「日本国王」としたが、徳川吉宗(左)は元に戻した

 

 16世紀の最末期、豊臣秀吉の朝鮮出兵は、東アジア史の画期をなす。日本列島という狭い範囲だけでも、政権の交代をもたらしたし、ひろくみれば、明清交代の呼び水にもなった。朝鮮半島の激動は今も昔も、それだけのインパクトがある。

 そしてその前後、朝鮮王朝との交渉経験の豊富な対馬が果たした役割は、決して小さくなかった。しかしそれはもはや従前のような「日本国王」としてではない。対馬の宗氏は秀吉・家康に服属しつつ、日本の統一政権と朝鮮との通交を果たす橋渡しの役割を演じた。朝鮮出兵の後始末も、そうである。

カテゴリ: 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
岡本隆司(おかもとたかし) 京都府立大学文学部教授。1965年、京都市生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。専門は近代アジア史。2000年に『近代中国と海関』(名古屋大学出版会)で大平正芳記念賞、2005年に『属国と自主のあいだ 近代清韓関係と東アジアの命運』(名古屋大学出版会)でサントリー学芸賞(政治・経済部門)、2017年に『中国の誕生 東アジアの近代外交と国家形成』で樫山純三賞・アジア太平洋賞特別賞をそれぞれ受賞。著書に『李鴻章 東アジアの近代』(岩波新書)、『近代中国史』(ちくま新書)、『中国の論理 歴史から解き明かす』(中公新書)、『叢書東アジアの近現代史 第1巻 清朝の興亡と中華のゆくえ 朝鮮出兵から日露戦争へ』(講談社)、『悪党たちの中華帝国』(新潮選書)など多数。
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