
若き日の藤原義江。撮影年不詳だが、撮影者は第2次世界大戦時、米日系人収容所で隠し持っていたレンズでカメラを作り、密かに収容所で暮らす日系人を撮影していたことで知られる写真家の宮武東洋(下関市「藤原義江記念館」提供、以下同)
ある日の夕方、義江はロンドンに着いた。
ミラノでさよならした喜波貞子(きわていこ)への未練しかない。自分がテナーになりたくて勉強と仕事を求めて洋行してきたのに、成功している喜波から離れられないのは自分の才能に自信がないからなのかと自問自答する。
そんな時、生まれたばかりの洋太郎が夭折したことを知った。自分も悲しかったが、文子が受けている悲しみを思うと前に進めないくらい落ち込んでくる。

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