不機嫌な「習近平」(下)「4中全会」が開かれなかった「謎」

執筆者:野口東秀 2019年3月27日
エリア: 北米 アジア
米中首脳会談が、4月以降に延期で、貿易戦争解決も先延ばし。権威の低下は続くか (C)AFP=時事

 

 全国人民代表大会(全人代=国会に相当)で対米配慮が目立ち、それが習近平国家主席の仏頂面の理由の1つと本稿(上)で指摘したが、誤解なきように言えば、中国は米国の覇権を奪うためのハイテク産業育成政策「中国製造2025」にわざわざ「政治報告」で言及せずとも、粛々と進めていく方針に変わりはない。

「権力」あっても「権威」なし?

 習主席の不機嫌さは、『狼煙を上げた知識層の激烈「習近平批判」』(2019年2月27日)で指摘したように、習主席の権力集中ぶりやその任期撤廃、経済の鈍化、加えて対米関係の悪化などについて、知識層や党内外から攻撃される状態に加え、経済政策(特に債務依存からの脱却と景気刺激対策)や外交政策で、党内の意見統一、共通認識の形成が完全になされていないからだろう。

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執筆者プロフィール
野口東秀(のぐちとうしゅう) 中国問題を研究する一般社団法人「新外交フォーラム」代表理事。初の外国人留学生の卒業者として中国人民大学国際政治学部卒業。天安門事件で産経新聞臨時支局の助手兼通訳を務めた後、同社に入社。盛岡支局、社会部を経て外信部。その間、ワシントン出向。北京で総局復活後、中国総局特派員(2004~2010年)として北京に勤務。外信部デスクを経て2012年9月退社。2014年7月「新外交フォーラム」設立し、現職。専門は現代中国。安全保障分野での法案作成にも関与し、「国家安全保障土地規制法案」「集団的自衛権見解」「領域警備法案」「国家安全保障基本法案」「集団安全保障見解」「海上保安庁法改正案」を主導して作成。拓殖大学客員教授、国家基本問題研究所客員研究員なども務める。著書に『中国 真の権力エリート 軍、諜報、治安機関』(新潮社)など。
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