「労災支給決定」減少でも「労災請求」増大のワケ

執筆者:磯山友幸 2019年7月12日
エリア: アジア
「過労死」「過労自殺」が減少し始めているデータが公表されたが、その実態は……(写真はイメージです)

 

 世の中は「働き方改革」ばやりだ。一律、深夜残業を禁止したり、夜決まった時間になると消灯するなど、残業圧縮に乗り出す企業も多い。本来、「働き方改革」は仕事のやり方を見直して生産性を上げるのが狙いのはずだが、今はともかく残業を減らせという「労働時間短縮運動」となって広がっている。

電通で起きた1つの“事件”

 もともと政府が「働き方改革」を掲げたのは、人口が減少していく中で、生産性を上げなければ経済成長はあり得ないという危機感からだった。安倍晋三内閣は「女性活躍促進」を掲げて女性の労働市場参入を促し、「一億総活躍社会」を掲げて働き続ける高齢者を増やしてきた。名目GDP(国内総生産)を増やすには労働投入量を増やすか、生産性を高めるかが必要になるが、ここ数年の伸びは労働投入量が増えた結果だ。65歳以上の就業者は800万人を超え、就業者数は実数で過去最多になっている。

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執筆者プロフィール
磯山友幸(いそやまともゆき) 1962年生れ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、大阪証券部、東京証券部、「日経ビジネス」などで記者。その後、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、東京証券部次長、「日経ビジネス」副編集長、編集委員などを務める。現在はフリーの経済ジャーナリスト活動とともに、千葉商科大学教授も務める。著書に『2022年、「働き方」はこうなる』 (PHPビジネス新書)、『国際会計基準戦争 完結編』、『ブランド王国スイスの秘密』(以上、日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)、『破天荒弁護士クボリ伝』(日経BP社)、編著書に『ビジネス弁護士大全』(日経BP社)、『「理」と「情」の狭間――大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP社)などがある。
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