「ブルドーザー」と呼ばれた大統領:ジャック・シラクとフランス政治の変遷(下)

執筆者:渡邊啓貴 2019年12月13日
9.11では真っ先に弔問のため訪米したが、イラク戦争には断固として反対した(C)AFP=時事
 

 それはまさしく、進取の気性に富む新しもの好きのジャック・シラクの性格そのものであり、シラク時代はその試行錯誤だった。しかし時代はもはや、フランスがその存在感を単独で謳歌できる様相ではなかった。

 シラク大統領は、アメリカの「一極化」とグローバリゼーション(アメリカ的標準化)が加速化されていく国際社会において、フランスのプレゼンスをいかに示していくのか、に腐心した。そしてシラク大統領は、ポスト冷戦時代を二極から多極(マルチポラリティー)世界への変化と捉えた。

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執筆者プロフィール
渡邊啓貴(わたなべひろたか) 帝京大学法学部教授。東京外国語大学名誉教授。1954年生れ。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程・パリ第一大学大学院博士課程修了、パリ高等研究大学院・リヨン高等師範大学校・ボルドー政治学院客員教授、シグール研究センター(ジョージ・ワシントン大学)客員教授、外交専門誌『外交』・仏語誌『Cahiers du Japon』編集委員長、在仏日本大使館広報文化担当公使(2008-10)を経て現在に至る。著書に『ミッテラン時代のフランス』(芦書房)、『フランス現代史』(中公新書)、『ポスト帝国』(駿河台出版社)、『米欧同盟の協調と対立』『ヨーロッパ国際関係史』(ともに有斐閣)『シャルル・ドゴ-ル』(慶應義塾大学出版会)『フランス文化外交戦略に学ぶ』(大修館書店)『現代フランス 「栄光の時代」の終焉 欧州への活路』(岩波書店)など。最新刊に『アメリカとヨーロッパ-揺れる同盟の80年』(中公新書)がある。
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